基本的だからこと役立つ移動平均線
FXではトレンドを見極めることが重要であると述べたことがありますが、今回はトレンド分析を行うのに役立つ移動平均線について、基本から説明します。
FXなどの投資を始めようと思い立った初心者ほど、とても有効な、魔法のようによく効く特殊な投資手法を求めがちです。
しかし、投資の経験を積めば積むほどマニアックなテクニカル分析からは距離を置くようになります。
なぜかと言えば、マニアックな特殊なテクニカル分析ほど、利用している投資家は少なくなります。
テクニカル分析とは、ある種の共同幻想のようなところがあって、みんなが効くと信じているので、効果を発揮するという面があります。
そのため多くの人が見ている、基本的な分析手法ほど有効性は高くなります。
今回ご説明する移動平均線は、トレンドラインなどと並んで、最も基礎的なテクニカル分析であり、とても役に立つものたつテクニカル分析だと思います。
移動平均線の作り方
移動平均線とは
移動平均線とは以下のチャートのようなものです(DMMFXのチャート機能を使って作成)。
青と赤のローソク足に沿ってひかれている黄色い曲線が移動平均線です。
これは5日移動平均線なので、ローソク足にかなり密着して形成されていますね。
移動平均線はどのように作られているのか
この移動平均線がどのようにできているかと言えば、
5日移動平均線の場合:過去5日間の終値(NYクローズを用いるのが普通)の平均値
です。
1日前のドル円:100円
2日前のドル円:101円
3日前のドル円:102円
4日前のドル円:104円
5日前のドル円:105円
ドル円レートが、上のように推移していたとしたら
(100+101+102+104+105)÷ 5=102.4
が足元の移動平均値になります。
これを一日経過するごとに、直近のレートを取り込み、6日前のレートを外してつないでいったものが、移動平均線になるわけです。
単純移動平均か指数移動平均か
移動平均には実は2種類あります。上の例で示したように単純に価格を平均した単純移動平均のほかに、
直近の価格の比重を重くした指数移動平均というものもあります。
市場の実態を考えると指数移動平均の方がより価値があるとも言えますが、分かり易くするために単純移動平均を用いて以下の議論を進めます。
なお、以下に説明することは指数移動平均でも同様に使える考え方なので、細かいことは気にせず読み進めて貰えばと思います。
移動平均線の期間
先ほどの例では5日移動平均線(5MAなどとも表現される)でしたが、平均の対象と利用される期間は5日だけとは限りません。
25日移動平均線などもメジャーで良くFXと投資家に用いられます。
先ほどの5日移動平均線と比べると、移動平均線がなだらかになってローソク足チャートとのかい離が広がっていますね。
25日とより多くの期間を平均するようになったので、移動平均値の前日比との差が小さくなって、移動平均線がなめらかになるわけですね。
そして、過去25日分と長期の平均になるので、過去の価格の影響力が強くなるため、ローソク足とのかい離は広がりやすくなります。
平均対象は1日単位でなくてもよい
移動平均線は1日の終値(NYクローズなど)の平均と説明してきましたが、終値を取るのは1日単位でなくても良いのです。
短期トレーダーが多いFX個人投資家には、1時間当たりの平均や5分、15分当たりの移動平均線もよくつかわれます。
ドル円レートの1時間移動平均線です。
上のチャートは5時間移動平均線で、25時間移動平均線にするなら下のようなチャートになります。
長期間の平均を取っている方が、なだらかな曲線になるという性質は(当たり前ですが)日単位でも時間単位でも変わらないですね。
移動平均線の使い方
移動平均線の傾きはトレンドそのもの
トレンドラインからFX市場のトレンドを分析する方法をご紹介しましたが、移動平均線の傾きはトレンドそのものです。
過去の値の平均値をずらしながらつなぎ合わせたものなので、それがトレンドを示すことは分かり易いかと思います。
ただ、傾きからトレンドを見るって使い方だけでは、移動平均線を活用したことにはなりません。
トレンドを見るのならトレンドラインなどより使いやすいものがたくさんあります。
移動平均線と現在価格の関係
大昔からあるチャート分析にダウ理論というものがありますが、このダウ理論で良く用いられるのが、移動平均線と現在値の関係です。
これは、チャート分析のなかでももっとも重要なものだと考えています。
移動平均線が示すもの
その理由を知るには移動平均線が過去の投資家の保有コストを(近似的に)示してることを理解する必要があります。
ドル円の5日移動平均線なら、この5日間でドル円のポジションを取った投資家の保有コストの平均値になります。
短期的トレードで用いられる25分平均線なら、この25分にポジションを取った投資家の平均コストですね。
移動平均線より現値が下にある時
移動平均線よりも現在のレートが下にある時は、端的に下落トレンドにあると考えられます。
ドル円の5時間移動平均線を例にしますが、過去5時間のうちポジションを取った人のコストを現在のレートが下回って推移しています。
こうした状況では、ショートサイド(売り方)は常に含み益、反対にロングサイド(買い方)は常に含み損の状況にあります。心理的に余裕がある売り方に対して、ロスカット(損切り)を意識しながらプレイしないといけない買い方はつらい展開ですね。
こうした場合は、一定程度トレンドに沿った値動きが継続しやすいものです。
この移動平均線と現値の関係は、ダウ理論ではさらに以下のパターンに細分化されます。
移動平均線の傾きが上向きのとき、現値が上にある
移動平均線の傾きが上向きのとき、現値が下にある
移動平均線の傾きが下向きのとき、現値が上にある
移動平均線の傾きが下向きのとき、現値が下にある
ただ、細かい話になるし、チャートをあまりこねくり回しても良いことないのでここでは説明しません。
移動平均線より現値が上にある時
冗長になるのでこちらは例示しませんが、移動平均線より現値が上にあれば上昇トレンドにあると判断できます。上の例の反対なのでご理解いただけるかと思います。
移動平均線かい離率
移動平均線より現値が下にあれば下落トレンド、上にあれば上昇トレンドと説明しました。
ただ、トレンドが下なら、どこまでも下落するかと言ったら当然そうではありません。むしろ、行き過ぎた相場は判定する可能性も高くなるでしょう。
現在の価格が移動平均線から大きくかい離してしまったら、それは危険信号の一つです。
過去の値動きの平均である移動平均線から大きくかい離する値動きは、行き過ぎた値動きである可能性もあるからです。
どの程度のかい離率で価格が反発するかは、対象とする通貨ペア、その時のFX市場のボラティリティ、価格変動のきっかけとなった出来事(大きなニュースがきっかけなら移動平均線とのかい離は正当化される)などによるので一概には言えません。
25日移動平均線とのかい離率3%などが良く目安とされますが、ケースバイケースなので機械的に覚えこむより、経験から使い方を少しづつ学んでいくのが良いと思います。(株式投資の場合は30%が目安になるなど対象資産で全く異なるので、固定的な考え方は非常に危険。投資全般に言えることかもしれませんが)
二つの移動平均線から分析する
移動平均を用いた分析で最も有名なのが、これからご紹介する2つの移動平均線を用いた分析です。
ゴールデンクロスやデットクロスの名前を聞いたことがある人は多いでしょう。
ドル円の5日移動平均線と25日移動平均線を引いたチャートを例にします。
上昇トレンドを示すゴールデンクロス
ゴールデンクロスとは、上のチャートの赤い楕円の個所を指します、
短期の移動平均線が長期の移動平均線を下から上に突き抜けていますね。
これは足元の勢いが強いことを示唆しており、上昇トレンドとみなされます。
下落トレンドを示すデットクロス
青の楕円で示した箇所がデットクロスです。
ゴールデンクロスとは反対に、短期の移動平均線が長期の移動平均線を上から下に突き抜けています。下落の勢いが強いことが見て取れるので、下落トレンドとされています。
なぜ、移動平均線の交差を利用するか
紹介しておいて変な話なのですが、わたしはあまりこのゴールデンクロスとかデットクロスは好きではありません。
現値と移動平均線の関係から判断する方がはるかに好きです。
それは、ちょっとこの移動平均線が交差するってことが示す事象にトレンドとの論理的なつながりが弱いように感じるからです。
無理やり説明するなら、(ゴールデンクロスの場合)短期の保有コストが長期の保有コストを上回れば・・・などいろいろ理由はつけられますが、(個人の感覚ですが)納得感は低めです。
ただ、移動平均同士を用いることで、より慎重な判断が出来、だまし(テクニカル上サインが出ていても、市場がその通りに動かないこと)にあう可能性は下げているとはいえそうです。
また、冒頭に説明したとおり、多くの人が意識しているものには一定の価値があるので、知っておいて損はないかと思います。