過去、米国の金融引き締め時には、中南米危機がセット
米国の堅調な経済指標を背景に、金融緩和縮小(テーパリング)開始の議論が再度熱を帯びています。
テーパリングの先には、金融引き締め(金利の引き上げ等)が控えています。過去米国の金融引き締め時を振り返ると、中南米では危機が頻発していました。
1980年代 レーガノミクスの時代
[経済的背景]
米経済は生産の低迷に苦しみスタグフレーション(景気低迷下でのインフレ)
↓
投資減税による生産性の向上を企図→上手くいかず
↓
財政赤字拡大(ソ連のアフガニスタン侵攻などによる緊張の高まりからの軍事費増大も原因)
[金融政策]
物価上昇に対抗するため、当時のボルカーFRB議長によるマネーサプライ増加抑制政策
財政赤字拡大と、緊縮的な金融政策のセットで、米国の長期金利は大幅上昇
プライムレートはなんと23%を記録
長期金利があがると
米国の長期金利の上昇は、本国における投資機会の増加につながるため、中南米に資金を貸出していた米系の金融機関は、資金の引き上げに動きました。中南米では1970年代からの好況で、米国からの輸入が増加し、対外債務が増加していたため、一気にカントリーリスクが意識されることになりました。メキシコを皮切りに連鎖的に危機が続き、中南米一体に金融危機が広がることになりました。
1990年代にも同じ状況が
同じことは1990年代にも起きています。
[背景]1990年代前半から中南米ブーム(メキシコのNAFTA加盟、通貨ペッグによる固定相場制への行き過ぎた信頼)
[政治]ルービン財務長官による強いドル政策の推進
[金融]FRBの引き締め転換
チアパス州での武装蜂起、大統領候補コロシオ氏の暗殺などの政治不安によってカントリーリスクが高まっていたメキシコから資金流出が始まりました。
結局は米国からの金融支援とメキシコの変動相場制への移行が必要な状況に追い込まれました。
米国が引き締めに動く際は、「米国の裏庭」なんて言われてしまうほど経済的に結びつきが強い中南米諸国の動向がどうなるのか、注目していきたいと思います。
なお、やたらとメキシコの登場頻度が高かったですが、現状においてはメキシコよりもブラジルが不安視されています。
理由は対外債務をコントロールしているように見えるメキシコに対し、ブラジルの対外債務上昇が止まらないためです。