雇用統計はボラティリティの低下を裏付ける結果
5月の米国の雇用統計が発表になりました。
非農業部門雇用者数は21.6万人の増加と事前予想の21.0万人とちょっと強め(ほぼ同水準)。失業率は6.3%と予想から▲0.1ポイント(失業率なので改善)です。
事前予想のバラツキも5月は最高値23.4万人~最低値17.5万人と狭いレンジでした。これはヒストリカルにもタイト気味な水準で(ちなみに4月の予想レンジが最高値25万人~最低値14万人)、米国の穏やかな回復ってシナリオにマーケットの予想が収斂されて行っていることがわかります。
そのことは、海外の株式市場のボラティリティ(価格変動性)などにも顕著にあらわれていて、S&P500の10%OTM(約10%上昇すると買い手に利益をもたらすオプション)のボラティリティは9%と極めて低位にあります。
こういった(インプライド)ボラティリティの低下は、株式市場が動かないと判断している人が、安い価格でオプションを売却することが要因になっているわけですが、今回の雇用統計はまさにその期待を裏切らない結果でした。
為替市場の反応も穏やかで、ドル円はいったん102.1円付近まで売られるものの、すぐにドルロングが優勢になり102.5円付近まで買い戻される動き。
ちなみにダウは67ドル高の16,903ドル、ドイツDAXが33ポイント高の9,981ポイント、日経平均先物は60円高の15,150円となっています。
米金利は底打ち感出てきて10年2.577%くらいまで上昇しています。
全般的には、着実な雇用情勢の回復が評価されています。
ECBの緩和策
あと、前日のECBの緩和策に関わる情報も。
ユーロ圏の消費者物価は5月+0.5%と、デフレ懸念を強まっていました。これはECBも予想外と認める低水準です。また、経済指標全般も、ドイツを除けば悪化が目立ちます。そのため、ECBの追加緩和策は待ったなしの状況だったわけですが、予想通り実施されました。
内容は
(1)利下げ(マイナス金利)
主要政策金利のリファイナンス金利は10bp引き下げて0.15%。0%だった預金ファシリティ金利も同幅引き下げて▲0.1%と、初のマイナス金利を採用しました。
教科書の中のだけの話かと思っていたマイナス金利を実際に見れるとは・・・
また、預金ファシリティ金利をマイナスにしても、超過準備に資金が振り替えるだけとポイントに配慮して、超過準備の金利も▲0.1%としました。これによって理論上は資金が民間ににじみ出やすい形となりました。
(2)条件付き長期オペ(targeted LTRO = TLTRO)
2011年から2012年にかけての欧州通貨危機の時に大きな効果を上げた3年物長期オペ(LTRO)は2015年に期限を迎えます。それにより自然と金融引き締め効果が発生してしまうため、再度のリファイナンス策として導入されました。
ただ、LTROで得られた資金の多くは、欧州国債に回っただけであり(それにより周辺国の金利が低下して欧州債務危機は沈静化したものの)民間への資金供給の導線としての効果には疑問符がつけられていました。
そのあたりを踏まえ、今回は前回のLTROと異なり、銀行が民間非金融部門への融資に
回すことを条件に資金を提供する条件付きLTROとして導入しました。
そのほかにもABS購入(量的緩和)の準備も発表されております。
マーケットの反応としては、強すぎるユーロをけん制したいECBの意向通りにはならず、ユーロが大きく売られる展開にはなりませんでした。ただ、欧州周辺国の金利には低下圧力がかかっているので、一定の効果はでているのかなぁ~っと思います。
参考リンク
5月米雇用統計:非農業部門雇用者数21.7万人増-失業率6.3% - Bloomberg
米雇用者数、5月は21.7万人増 4カ月連続で20万人超の強い伸び | Reuters