仮想通貨(ビットコイン)の利益への税金のかかり方
ビットコイン(とアルトコイン)の急上昇で仮想通貨市場への注目の高まりが収まりません。
出川哲郎さんが出演したコインチェックのTVCMの効果もあって最近仮想通貨取引に参入したという人も多いでしょう。
そんな人が利益を出したときに真っ先に心配になるのは税金のこと。
この記事では、国税庁が公表したビットコインなどの仮想通貨(暗号通貨)の税金の計算方法(課税上の取り扱い)を元に、仮想通貨の税金の計算方法を解説します。
https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/joho-zeikaishaku/shotoku/shinkoku/171127/01.pdf
リンク先資料を引用しつつ、なるべく簡単に分かりやすく説明してみます。
そもそも仮想通貨は雑所得
これは従来より決まっていたことですが、ビットコインなどの仮想通貨は雑所得扱いです。
雑所得はあなたの給料やほかの事業などからの収入を合算して課税される、いわゆる総合課税ですね。FXや先物取引の税金と同じ扱いです。
そのため、高所得者だったり、仮想通貨の利益額が大きい人には、極めて高い税率(所得税の累進最高税率は45%!)が適用されます。
ただ、今回雑所得して課税されないケースが明示されました。
それは、事業として仮想通貨を売買したことが明らかな場合(専業仮想通貨投資家または専業投資家が仮想通貨を仕事として取引)は、事業所得として取り扱うというものです。
この場合は損益通算の対象になるので、(専業投資家なら)株の損失とぶつけるなど多少の節税手段がとれそうです。
仮想通貨を売却した場合の取り扱い
問 保有する仮想通貨を売却(日本円に換金)した際の所得の計算方法を教えてください。
(例)3月 9日 2,000,000 円(支払手数料を含む。)で4ビットコインを購入した。
5月 20 日 0.2 ビットコイン(支払手数料を含む。)を 110,000 円で売却した。答 保有する仮想通貨を売却(日本円に換金)した場合、その売却価額と仮想通貨の取得価額との差額が所得金額となります。
上記(例)の場合の所得金額は、次の計算式のとおり、10,000 円です。
これは、非常に当たり前の解説で、特に国税庁が見解を出さなくてもだれもがこのように計算すると思います。
仮想通貨で仮想通貨を買ったパターン
仮想通貨で仮想通貨で買った場合の所得の取り扱いは、悩ましい問題でした。
1ビットコインでアルトコインを買った場合の計算ってことですね。
- 「どのように計算するのか」
- 「そもそも仮想通貨で仮想通貨を買っただけで、所得と言えるのか?」
などいろいろな意見があったと思います。
これに対する国税庁の見解は、以下のようなものです。
問 保有する仮想通貨を使用して他の仮想通貨を購入する場合(仮想通貨と仮想通貨
の交換を行った場合)の所得の計算方法を教えてください。
(例)3月 9日 2,000,000 円(支払手数料を含む。)で 4 ビットコインを購入した。
11 月 2日 他の仮想通貨購入(決済時点における他の仮想通貨の時価 600,000
円)の決済に 1 ビットコイン(支払手数料を含む。)を使用した。答 保有する仮想通貨を他の仮想通貨を購入する際の決済に使用した場合、その使用時点での他の仮想通貨の時価(購入価額)と保有する仮想通貨の取得価額との差額が、所得金額となります。
上記(例)の場合の所得金額は、次の計算式のとおり、100,000 円です。
仮想通貨で仮想通貨を買うだけで所得が発生する(可能性がある)って意味です。
これにはびっくりする人も多いかも知れません。
ただ、外貨の取り扱いになれている人なら想定できる回答ともいえます。
なぜなら、日本人がドルを持っていた場合、そのドルを別の外貨(ユーロやポンドなど)に変えた場合、(円換算の)利益に対して為替換算益として課税されていたからです。
国税庁の仮想通貨間の課税方法も、外貨間取引の課税方法に倣ったものと言えるでしょう。
仮想通貨で品物を買っても課税される
自分の買った価格より値上がりした仮想通貨で買い物をしたらどうなるのでしょうか?
それに対する回答は、利用した仮想通貨の値上がり分に相当する金額に課税されるってことになります。
上の外貨間の関係とある意味一緒ですね。
使った分に対する値上がり益が課税されるってことです。
問 商品を購入する際に、保有する仮想通貨で決済した場合の所得の計算の方法を教えてください。
(例)3月 9日 2,000,000 円(支払手数料を含む。)で4ビットコインを購入した。
9月 28 日 155,000 円の商品購入に 0.3 ビットコイン(支払手数料を含む。)を支払った。
答 保有する仮想通貨を商品購入の際の決済に使用した場合、その使用時点での商品価額と仮想通貨の取得価額との差額が所得金額となります。
上記(例)の場合の所得金額は、次の計算式のとおり、5,000 円です。
この使った仮想通貨に対する課税は、仮想通貨の普及にマイナスに働きそうですね。
高額な買い物をするときなどは、その年の所得状況を考えながら利用しなくてはいけなくなります。
主婦や学生など不要に入っている人には、かなり繊細な利用方法が求められて、結果として仮想通貨の決済手段としての魅力を落としそうです。
仮想通貨の取得原価は移動平均法
仮想通貨の利益を求めるには、そもそも原価を計算できなければなりません。
この原価は、原則移動平均法で計算するべしっていうのが国税庁の見解です。
ただし、継続利用を条件に総平均法を用いることも可能です。
棚卸資産などと同じ考え方ですね。
仮想通貨の分岐、分裂が起きた場合、売却した場合のみ課税
仮想通貨はビットコインの分裂騒動のように、コア開発者、マイナーなどの利害関係から分裂する可能性があります。
この分裂した仮想通貨はある意味、タダでもらえるようなものですから、そのもらえた時点で課税されるのでしょうか?
国税庁の見解は、「売却したら所得(課税対象)」ということになります。
新通貨はタダでもらえたって扱いになって、売却時に全額所得になるようです。
分裂したモノがタダでもらえると言えば、株式の分割のようですが、取り扱いは少し違いますね。
株式の場合は、売却時に課税されるってことは一緒ですが、全体の取得価格を維持して1株当たりの取得価格を下げるって処理になるので、総保有株数にマイルドに課税されるイメージになります。
マイニングで仮想通貨を得た場合、採掘時点で課税
マイニングで仮想通貨を得た場合の課税関係は一見すると分岐・分裂で得た場合と近そうです。そうなると、売却したり、使った時点で所得として課税されるのかなぁ~とも思えますが、国税庁の見解は違います。
マイニングで採掘した時点の仮想通貨の時価を収入として得たもの課税されることになります。
- 分岐・分裂でもらった通貨は得た時点の価値はゼロ⇒売却時点で課税
- マイニングで採掘した通貨は得た時点で時価を持つ⇒採掘時点で課税
ってことのようです。
もちろん、マイニングに費やした電気代やPC代などはコスト(必要経費)として所得から減算することが出来ます。
まとめ
国税庁の見解発表によって、仮想通貨の課税関係で不明確だった部分がかなりクリアになった感があります。
どれも、理屈は通っている処理方法だと思いますし、既存の外貨資産の課税関係から見ても違和感は感じません。
ただ、仮想通貨がボラティリティが極めて高い資産であることを考えると、ものすごく理不尽な思いをする人も出そうな解釈ですね。
特に仮想通貨間の売買で高額の課税された人が、翌年は大損して、税金と損失で死亡パターンはかなり出てきそうです。
外貨は(FX取引のようにレバレッジを掛けなければ)ボラティリティが低いので大きな問題につながらない場面でも、仮想通貨ではものすごい弊害を生むことは普通に想定できますね。