日銀内での意見対立が表面化。国債市場と株式市場、正しいのはどっち?
展望レポートとは日本銀行が発行する以下のようなものなのですが
日本銀行は、4月および10月の政策委員会・金融政策決定会合において、先行きの経済・物価見通しや上振れ・下振れ要因を詳しく点検し、そのもとでの金融政策運営の考え方を整理した「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)を決定し、公表しています。
11月1日に公表された展望レポートにおいて、日銀は、ほぼ 2 年で実際のインフレ(及びインフレ期待)が物価上昇率の目標である 2%に達する可能性が高いとの見解を示していました。
しかし、佐藤氏(民間エコノミスト出身)、木内氏(民間エコノミスト出身)、白井氏の3審議委員は、10月31日に公表された「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」に反対票を投じていました。
その理由が、今週公表された議事要旨で明らかになりました。
佐藤審議委員の主張
コア CPIについての記述
展望レポート「見通し期間の後半にかけて、物価安定の目標である 2%程度に達する可能性が高い」
↓
同審議委員の主張「2%程度を見通せるようになる」
物価見通しのリスク
「上下に概ねバランスしている」
↓
「下方にやや厚い」
物価上昇に対する慎重な見通しを主張しています。
また木内委員についても
インフレ期待
展望レポート「物価安定の目標である 2%程度に向けて次第に収斂していく」
↓
同審議委員の主張「緩やかな上昇傾向を辿ると考えられる」
両委員とも、今後約2年でインフレ率とインフレ期待が2%前後まで高まることに懐疑的な印象です。
両議員の見方は、概ね国債市場の金利見通しと一致
民間エコノミスト出身の両議員の見方は、概ね国債市場の金利見通しと一致しています。
日銀が買い入れ額を増やすことで金利のコントロールが可能な、超長期(10年超金利)ゾーンと異なり、流通量が大きい10年国債は日銀のコントロールが効きにくい世界です。
その10年金利が0.6%程度の水準にとどまっている状況は、日銀の物価見通し「2年後に2%の物価上昇率達成」がなされるならば、債券価格が非常に割高な水準にプライシングされていることになります。
すなわち、国債市場は日銀の「2年後に2%の物価上昇率達成」を信用していないわけです。
一方で株式市場は全く別の見解を持っていて、既に一定の物価上昇は既定路線という見方が支配的です。
株式市場は債券市場のできの悪い弟、などという格言もありますが、今回はどちらが正しいのでしょうか・・・