日銀の金融政策の決定方法が一からわかるまとめ
日本の金融政策の決定方法
以前こんな記事を書きまして米国の金融政策についてまとめました。
米国の金融政策は注目だが高くてもちろん世界中で最も重要な意思決定の一つなわけですが、日本の中央銀行である日本銀行(BOJ)の意思決定も重要です。
日銀は、米国の中央銀行であるFEDや欧州の中央銀行であるECBに次ぐ資産規模を持っており、メジャーカレンシー(主要通貨)の一角を占める円のコントロールを行っています。
そんな日本銀行の金融政策の意思決定がどのように行われているか見てみましょう。
日銀の金融政策の目的
- 物価安定の維持(日銀法第2条)
- 金融システムの安定(日銀法1条2項)
日銀の目的は、物価と金融システムの安定ってことで分かり易いです。
最近ではごっちゃになっていますが、日本の経済成長にはコミットしていないのですね。ただ、実際には民主党時代に政府の成長戦略の無さに業を煮やして、成長資金融資などの成長戦略の一旦も担うようになりましたが。
こうした傾向は継続しており、アベノミクス時代になって、より日銀の傾向に成長戦略へのかかわりが強くなっていますね。
ただ、少なくとも法律に定められた日銀の目的はあくまで物価と金融システムの安定ってことは覚えておいて損はないです。
政権が変わったり、日銀総裁が変わったりしたら、そうした安定を重視する本来の姿に戻る可能性が十分にあるって認識できるわけですから。そうなれば、為替市場の反応も想像がつく部分もあります。
なお、アメリカのFED(米国の金融政策決定機関)は、雇用の最大化も目標に掲げています。安定と成長って二兎を追うような形になっているので、なかなか政策運営が難しいのがFEDの特徴ですね。
意思決定機関
政策委員会
金融政策決定における最高の意思決定機関が政策委員会です。
旧日銀法の下では、総裁、副理事、理事からなる役員集会で重要な意思決定がなされており、政策委員会は事実上形骸化しているといわれていました。
そのため、1998年に改正された現行の日銀法のもとで最高の意思決定機関と位置づけられるようになりました。
政策委員会の構成
日銀総裁(1名)、日銀副総裁(2名)、審議委員(6名)名の9名構成
最近では、民間エコノミストから2名程度選ばれることが多いです。特にテレビ東京のモーニングサテライトのコメンテーターを務めているエコノミストは選ばれやすい気がします。
政策委員会委員の任命
構成員9名の全員が国会の合意を得て内閣により任命される。
そのため、前回の自民党政権下でのねじれ国会で、民主党の反対で総裁がなかなか決まらなかったこともありました。
国会の介入が強いので政争の具にされてしまうのは、少し日本人として不幸なことかと思います。
金融政策決定会合
政策委員会の会合のうち、金融政策の運営に関する事項を審議・決定する会合。9名の政策委員による多数決で議決されます。
金融政策決定会合への政府からの出席者は議案提出権及び議決延長を求めることができるが、日銀の独立性を担保するため議決権は保持しないことになっています(出席する段階でプレッシャーになるかも知れませんが)。
政府からの出席者の発言は金融政策決定会合議事要旨の中で公表されています。
議事内容
・金融市場調整方針
・金融政策手段
・経済・金融情勢に関する基本的見解
・基準割引率、基準貸付利率および預金準備率
開催頻度
年間8回開催に黒田総裁になってから変更された。
アナウンスメント
会合終了後にアナウンスメント。時間は決まっておらず、重要な政策変更があるときほど遅い傾向がある。
そのためなかなか発表がないと、株式市場も為替市場も期待が高まることもおおい。
通常会合
金融政策以外の内容を決定
議事内容
・信用(クレジット)秩序の維持のため業務(金融機関の劣後債を日銀が引き受ける決定等)
・国際金融業務
・国会への報告書の作成
開催頻度
原則毎週2回
金融政策に関して公表される資料
金融経済月報
金融経済についての日本銀行の見解及び景気判断が示される。
①基本的見解
②背景説明
③参考計表
から構成される。
議事要旨
金融政策決定会合等の議事の要旨。次回会合で承認されるとその3営業日後に公表。
展望レポート(経済・物価情勢の展望)
以前は4月と10月に2年回公表だったものが、黒田総裁になってから年間4回公表に変更。
内容は日本銀行の経済・物価情勢に対する進行年度、翌年度の見通しが公表される。
為替介入
よく「政府・日銀が為替介入を実施」と報道されるが、介入を決定するのは財務大臣(円相場の安定を実現するため)、実際の介入オペレーションを行うのが日銀という位置づけ。
(直接)介入の意思決定には、日銀は関与していないわけですよね。
その為替介入のオペレーションを担っているのが金融市場局為替課です。ここでは財務省とともに常に為替市場を分析しています。ここでは、各国経済の長期的な分析などファンダメンタルズに加えて、銀行の為替ディーラーや機関投資家などFX市場の主要プレーヤーとも情報交換をしており、日本有数の為替分析チームと言われています。
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