FX市場の季節別特徴。アノマリーですが各国の文化に根差した部分もあります
為替市場の季節別特徴
1か月のなかでの値動きは、ゴトウビっていう資金決済日が影響を与えていることはわかりました。ここからは、1年間の季節別の特徴を、五十日のような為替の実需(取引需要)の観点からご説明します。
こういった季節別の特徴というのはあくまでアノマリーです。そのため必ずしもこうなるってわけではないのですが、為替取引の中心になっている国々の文化に根差した特徴でもあるのでしばしば話題に上がります。
知っておいて損はない、というむしろ知っておくべきかと思います。
- 為替市場の季節別特徴
- 1月のFX市場の特徴
- 2月~3月のFX市場の特徴
- 4月~5月のFX市場の特徴
- 6月のFX市場の特徴
- 7月後半~8月のFX市場の特徴
- 9月、10月に波乱あり?
- 11月のFX市場の特徴
- 12月(後半)のFX市場の特徴
1月のFX市場の特徴
予想されるイベントを先取りした動き
外銀(為替取引のシェアが高い海外の銀行、JPモルガンチェース、CITYバンク、UBSなど)には、顧客の注文を捌くのではなく自己勘定で投資を行う外為ディーラー(プロップディスクとかポジションディーラーと呼ばれる)がいます。銀行はインターバンクを通じた市場の形成者であるのと同時に、投機的プレーヤーでもあるわけですね(担当者は別)。
外為ディーラーは、比較的長期のトレンドフォローで取引することが多く、年間の大きなトレンドを見極めようとしています。
そして彼らの成績が判断されるのは年間単位(1月~12月)。
ということは、1月はポジションを持っていない状態から始まって、徐々にポジションを積み上げるタイミングを計る時期になります。
そのため、1月に発生しやすいトレードは、その年に予定されている大きなイベントが示唆する方向に沿った取引ですね。
ここ数年であったことと言えば、以下のようなものがありましたね。
・米国が利上げ局面に転じると予定されている→ドル高
・英国で政治的に大きなリスクイベントが待ち構えている→ポンド安
様子見がちな展開も
大きなイベントがあるときは分かり易いトレンドが出ることが多い1月ですが、為替市場の注目対象が分散しているときやそもそも焦点が見出しがたいときは、様子見がちな展開になることも1月のFX市場の特徴です。
2月~3月のFX市場の特徴
1月に発生したトレンドが継続しやすい、しかし継続性には注意
2~3月は1月に発生した為替市場のトレンドが継続しやすい時期とみなされています。
特に注目イベントが年後半にあったりすると、そのイベントに向けたトレードが継続しやすい時期です。
1月に発生したトレンドに追随するというトレンドの自己強化的な展開が起こりやすいのです。
ただし、ここで発生したトレンドは、ある意味FX市場に織り込まれ過ぎたイベントとも言えます。そのため、時間の経過とともに、市場の予想通りに物事が進まない時は、年間を通してみたとき全く真逆の方向に進むことも大いにあります。
2014年のドル絡みのイベントはまさにそんな感じでした。
日本企業の円転が円高要因
3月になるとトレンド的な話とは別に、日本企業の実需取引が為替市場に影響を与えます。
3月決算を迎えるため、日本企業が持っていた外貨を円に換えることで、円ベースでの損益確定を図るってニーズが現れます。どのため円買いの動きの活発化します。これはドル円レートの円高要因となります。
米国債の償還・利配資金
世界で最も流動性があって、信頼されている資産はアメリカの国債(米国財務省債 United States Treasury security)です。
日本や中国、産油国のように米国にたくさん輸出している国は、輸出で得た利益をすぐには自国に還流させずに、信頼性の高い米国債で資産運用しているケースが多いです。
そして国債には償還と利払いがありますが、それが集中しているのが2月(及び5月、8月、11月)です。この時期は、国債償還資金の本国への還流のうわさでドル安ってニュースが流れることがあります。
4月~5月のFX市場の特徴
日本の機関投資家の売買活発化
3月決算を経過することで、日本の機関投資家の外貨投資の活発化します。
生損保などの投資家に特にみられる傾向ですが、3月決算時点で見込んでいた収益を下回りたくないって欲求が強いのです。そのため、3月手前では外貨投資(ヘッジ無し)のようなアグレッシブな投資はやりにくいのです。
その後4月に入って、これまで控えていた外貨投資を行うってことになるので、外貨買いの需要が増えることになります。
4月のイースター休暇による売買低迷
キリスト教徒にとって大きなイベントなのが、4月のイースター休暇。復活祭とも言われるイースター休暇には、海外の金融機関の多くは休暇になります。日本の銀行は通常営業ですが、外国人の売買が減るので流動性は大幅に低下します。
株式関連ニュースとの連動
この時期は3月決算企業の決算発表があることで株式関連のニュースフローが増加します。株式市場と為替市場は一定の連動性がありますので、極端に大きな出来事があると為替市場が反応することがあります。ただ、一企業の決算程度ではそこまで強い影響はありませんが、●●ショックと言われるような株式市場全体が急落するような結果が出た場合は、為替市場にも影響を与える可能性があります。
また、決算発表に合わせて日本企業の海外企業買収が公表される場合は、要注意です。企業買収は外貨買い要因なので、海外企業買収ニュースに外貨高円安というという反応が起きることはままあります。
6月のFX市場の特徴
若干ネタ的な話ですが、この時期は日本企業のボーナス時期。そこで金融機関から海外資産への投資を進められた個人のお金が海外に流れて円安を誘発するって話が出ることがあります。
アノマリーのなかでも結構真偽不明な要素が強い話ですが・・・
7月後半~8月のFX市場の特徴
日本では夏休み(お盆休み)がある時期ですが、影響が大きいのは海外のサマーバケーション。外人の夏休みは本気で長くて一か月くらい平気で休む人もいます。ハードワークの金融業界でも例外ではなく、夏場は休む人が多いため取引は停滞気味。FX市場はお休み気味ですね。
反対に夏休みに入る個人投資家の証拠金(FX)取引の影響が相対的に高まるって見方もあります。
9月、10月に波乱あり?
9月のレパトリ(本国への資金還流)
日本企業の中間決算期末は9月末が中心的です。そのため9月には日本企業が決算を確定する目的で、海外小会社の利益を日本へ還流させる取引が行われます。
ドル(外貨)売り円買い取引が行われるわけですね。
こういう本国(日本)への資金還流的な動きをレパトリゼーション(レパトリ)などと言います。
10月のアメリカ株安
10月は「10月効果」とアメリカ株が下げやすい月と言われています。
米株安から為替市場に波乱が起きることがあると見られているのです。
有名やブラックマンデー(Black Monday)も1987年の10月に起きました(10月19日)。
なお、10月に下げた米株はここで下げ止まり、買い場になるというのが株に関するアノマリーです。
11月のFX市場の特徴
欧米企業の決算
欧米企業は12月決算。この辺りで自国通貨である、ドル、ユーロを買うって動きがで安い傾向があります。2~3月のFX市場で日本人が行う円買いと一緒ですね。
円は売られやすい時期と言われています。
投機的プレーヤーのポジションクローズ
また、この時期から為替市場の流動性は低下し始めます。1月で説明した銀行の投機的プレーヤーもこの時期から、帳簿を締めに行きます。ポジションを無くして収益を確定するわけですね。サンクスギビングデーのあたりからはこうした理由で為替市場の流動性は下がります。
12月(後半)のFX市場の特徴
12月後半のクリスマス休暇は欧米人にとって超重要。ここは家族サービスに費やさなくてはならない期間になるため、外国人(キリスト教徒)はお休みです。サマーバケーションの時期と似ていますが、それ以上に市場の流動性は極端になくなります。
1月、11月のところで説明した銀行の投機的プレーヤーもこの時期には、利益(または損失)を確定し終わっているので、まず取引には参加しません。
反対に日本人がお休みに入る大晦日、正月辺りには(1月1日を除いて)外人は動き出します。