ジュニアNISAのとは?メリットとデメリットを分かりやすく解説
NISAは20歳以上なら利用できる使い勝手の良い制度でしたが、20歳未満はつかうことができず、子供向けの資産形成には貢献していませんでした。
そこで2016年には「ジュニアNISA」と呼ばれる制度がスタートしました。
20年近く無税で投資できるので「教育資金作りに向いている」として話題になっています。
節税になる投資として、iDeCoの解説記事を書いていますが、長期投資ができるジュニアNISAも悪くないですよ。
似たような位置づけの学資保険は保険会社へのコスト支払いが重いこととと低金利の環境下でほとんどお金が増えない不利な金融商品でした。
そこで登場した待望のジュニアNISAについては知っておいて損はありません。基礎知識をわかりやすくご紹介します。
- ジュニアNISAってどんなもの?
- ジュニアNISAの始め方
- NISAと比べた時の大きな違いは?デメリットはある?
- ジュニアNISA口座と課税ジュニアNISA口座ってなんで2種類ある?
- ジュニアNISAの疑問点
- 子どもの教育資金をジュニアNISAを準備するには?
- なぜ、ジュニアNISAが教育資金の準備に適切か
- ジュニアNISAの狙いって?
- まとめ
ジュニアNISAってどんなもの?
ジュニアNISAは、その名前の通り2016年からスタートした「子ども用NISA」といったところです。
普通のNISAは「長期投資を行う人の資産形成を後押ししよう」って趣旨のものですが、NISA口座は20歳以上しか開設することが出来ません。
これでは、子供の資産形成を後押しすることはできませんね。
子供も将来の大学進学や結婚など長期的に資産形成したほうがもちろん望ましいです。もしかしたら、起業資金したい、なんて子供も出てくるかもしれませんね。
そんな子供のために、ジュニアNISAなら0歳~19歳までが開設可能な仕組みになっています。
つまり、家族全員でNISA口座の開設が出来るようになっているんですね。
NISAと比べると対象となる商品や年間投資額の上限に違いがありますが、基本的には同じ少額投資制度です。条件を整理してまとめてみましょう。
ジュニアNISAの特徴
対象 |
日本在住の0歳~19歳まで(20歳未満) |
非課税期間 |
口座開設から5年間 |
非課税投資額上限 |
最大400万円 |
投資可能期間 |
2016年から2023年まで(8年間) |
年間投資上限額 |
80万円 |
対象商品 |
株式投資信託、国内・海外上場株式、国内・海外ETF、ETN(上場投資証券)、国内・海外REIT、新株予約権付社債(ワラント債) |
NISAよりも対象商品は多いですが、中長期的な資産形成を行うのが目的であること、口座開設者が未成年であることなどを考えると「分かりやすい投資商品」「無駄なコストがかかっていない商品」、「分配頻度の低い投資信託」…つまり、NISAで購入可能な商品(株式、投資信託、ETF、REIT)から始めるのがおすすめです。
ジュニアNISAの始め方
経験がないと「投資を始める」と聞くとちょっと敷居が高く感じてしまうかもしれませんね。でも、実は意外と簡単に口座を開設することが出来るんです。具体的にどんなステップを踏むのか見ていきましょう。
口座を開設する金融機関を選ぶ
まず、ジュニアNISAを解説する口座を選ばなければいけません。証券会社の他にも、銀行などで口座開設することが出来ます。
おすすめなのは、やはり証券会社です。ジュニアNISAで取扱いのある幅広い商品を選ぶことが出来ますし、専門知識を持っている投資家のアドバイスを受けられるなどのサービスも豊富なところが比較的多いです。特に投資初心者の方は証券会社で口座開設を検討するのがおすすめです。
各金融機関ではジュニアNISA口座開設で手数料無料、などお得なキャンペーンをやっていますので合わせてチェックするといいですね。
口座開設を申し込む
金融機関を決定したら、口座開設を申し込みます。最近はネットで申し込めるところも多いです。初心者の方は大手のネット証券会社を選ぶ方も多いですよね。
ホームページの案内に従って、口座開設申し込みを行います。まず、必要事項をフォームに入力するか、申請書を郵送してもらいます。郵送の場合は申請書に必要事項を記入して返送することになります。
合わせて必要なのがマイナンバーです。「通知カード」や「個人番号カード」などのコピーを提出します。最近はWEBアップロードで手軽に確認できる方法がとられていることも多いようです。金融機関によって方法が異なるので、ホームページ等でしっかり確認しましょう。
注意しなければならないのが、ジュニアNISA口座を解説しようとしている金融機関に親権者も取引口座を持っていなければいけない点です。
もし持っていない場合、同時に親権者の口座開設申し込みを行う必要があります。親権者の口座はNISA口座でなく、総合取引口座でも大丈夫ですよ。
税務署に確認
金融機関が税務署に非課税適用申請の手続きと、ジュニアNISA口座の重複がないかの確認を行います。
ジュニアNISAは1人1口座までの開設ですので、一定の確認期間が必要になるのです。確認が終了すると、税務署から「確認書」が交付されて口座が開設されます。
口座開設完了!
無事に手続きが終了したら、金融機関からアナウンスがあります。これでジュニアNISA口座の開設は完了です!さっそく金融商品を購入してみましょう。
NISAと比べた時の大きな違いは?デメリットはある?
口座を開設出来る年齢以外では、ジュニアNISAにはどんな特徴があるのでしょうか。
18歳までは払出し出来ない
大きな特徴は、原則として口座名義の者が18歳(厳密には3月31日で18歳である年の前年12月31日)になるまでは払出しが出来ないところです。
その理由は、ジュニアNISAが中長期にわたって投資を行うための制度だから。
基本的には親や祖父母が口座を開設し、子どもや孫のために将来に向けた資産形成することを主な目的にしているからです(第三者が開設することも可能)。
口座管理者は親権者が子どもの代理で行い、開設するため親権者が同じ証券会社に口座開設していなければなりません。
18歳になるまでに払出しができないわけではありませんが、引き出してしまうと過去に非課税とされていた利益にも課税されます。
それではNISAのメリットが半減してしまうので、基本的には18歳までは払出しがないと考えた方がいいでしょう。
金融機関の変更が出来ない
ジュニアNISAも1人一口座まで開設することが出来ます。
もし金融機関を変更する場合は、一旦開設していた口座の廃止手続きをしてから他の金融機関で再開設しなければなりません。これもNISAとは異なります。
もし払出し制限が解除されるよりも前に口座を廃止する場合には、非課税とされていた過去の配当金や譲渡益等にも課税されることになります(災害等やむを得ない事情による場合を除く)。
親権者の分も含め、どこの金融機関に口座を開設するのか、慎重に検討しなければなりませんね。
配当金の受け取り方の設定に注意する必要がある
ジュニアNISA口座で得た上場株式の配当金、ETF・REITの分配金を非課税にするためには「株式数比例配分方式」に設定する必要があります。
そうしないと利益の配当時に課税されてしまうので、NISAのメリットがなくなってしまいます。
この株式数比例配分方式は、上場株式の配当金やETF・REITの分配金を証券会社の取引口座で受け取る方式のことです。
非課税になるだけなく、小銭が配当で来るとめんどくダサいので、しっかり手続きを行う必要がありますね。
ちなみに、ジュニアNISA口座以外の特定口座、一般口座で受け取る全ての配当金も自動的に同じ「株式数比例配分方式」で受け取ることになります。
ジュニアNISA口座と課税ジュニアNISA口座ってなんで2種類ある?
ジュニアNISAの口座を開設すると、「ジュニアNISA口座」と「課税ジュニアNISA口座」の2種類が出来ます。この2種類、どんな違いがあるのでしょうか。
ジュニアNISA口座
通常の取引や運用を行う口座です。非課税対象となるのは、上場株式、ETF(上場投資信託)、REIT(不動産投資信託)、株式投資信託の4種類。
NISAで買い付け出来る4種類と同じ金融商品で得られた譲渡益や配当金・分配金です。
課税ジュニアNISA口座
ジュニアNISA口座で得られた売却代金や配当金、ジュニアNISA口座で再投資しない分配金を管理する目的で作られます。
子供が18歳になるまでは、課税ジュニアNISA口座で売却代金などを管理します。例外を除き、この口座外に払出しは出来ません。
非課税期間となる5年が過ぎると、ジュニアNISA口座の上場株式は課税ジュニアNISA口座に移ります(ロールオーバー)。
その後に得られた売却益などには課税されるようになっています。
ちなみに、課税ジュニアNISA口座でも投資を行うことが出来ます。でも、得た利益は非課税にはなりませんので注意しましょう。
ジュニアNISAの疑問点
ジュニアNISAは制度を使える年齢に制限があるので、「この場合はどうなるの?」と疑問が出てくることもありそうです。想定されるケースをいくつか見てみましょう。
ジュニアNISA制度の利用期間内に20歳になったら?
2023年になるまでに子どもが20歳を迎えるとどうなるのでしょうか。8年もあるので、そんなケースも少なくはないでしょう。
その場合、20歳になる年の1月1日に自動的にNISA口座が開設されます。この時に一般的な「NISA」にするか、「積立(つみたて)NISA」にするか選択するのか選ぶことが出来ます。
NISAを選んだ場合は、ジュニアNISAの未成年者口座(非課税口座)内の金融商品はNISA口座に移すことができます。
20歳になる前にジュニアNISA制度が終了してしまったら?
もし2023年でジュニアNISAの制度が終了してしまう場合は、「継続管理勘定」という制度で20歳になるまで非課税で保有することができます。それか、売却して現金化することも可能です。
「継続管理勘定」とは、非課税期間が終了するタイミングで移すことが出来る、ロールオーバー専用の非課税枠です。
継続管理勘定に移せば、1月1日の時点で20歳になる年の前の年、つまり高校3年生の年の12月31日までは非課税となるメリットが継続します。継続管理勘定では新しく買付けは出来ません。
贈与税の対象になる?
ジュニアNISAの場合、口座名義は子ども本人ですがもちろん自分で運用することは出来ませんよね。
基本的に両親や祖父母などの出資者から運用資金を「生前贈与」するという考え方としてジュニアNISAあります。
そのため、ジュニアNISAは贈与税の対象となります。
1年の贈与額が基礎控除額110万円を超えると、贈与を受けた子どもが贈与税を納税する義務が生じます。ジュニアNISA以外の金額も考慮して、その点を注意する必要があります。
子どもの教育資金をジュニアNISAを準備するには?
ジュニアNISAで教育費を賄うって利用方法が広く知られています。
教育費に「子育てには教育費がかかる」といっても具体的にどの程度かかるのか、平均を見てみましょう。
保育園・幼稚園時代
認可保育園184万円(6年間)
私立幼稚園146万円(3年間)
公立幼稚園69万円(3年間)
保育園の方が費用は安い傾向にありますが、今は保育園に入るのも難しい時代です。
認可外保育園やベビーシッターなどのサービスを利用する場合はもっと高額になることが予想されます。
自治体によって補助金が出ることもありますので、条件をしっかり確認するようにしましょう。
小学時代校
私立小学校853万円(6年間)
公立小学校183万円(6年間)
習い事代1.5万円/月
私立・公立によってかなりの左がつきます(国立は公立なみの金額)。習い事を始める家庭も増え、一気に教育費がかかり始めるのが小学校です。
中学校時代
私立中学校388万円(3年間)
公立中学校135万円(3年間)
校外活動費29万円
部活動や塾で学校外にかかるお金や、スマホを持ち始める子も多い中学時代。教育費はうなぎ登りになってきます。
高校時代
私立高校290万円(3年間)
公立高校115万円(3年間)
校外活動費25万円
大学受験に向けた塾通いや、おこづかいの増額などで教育費の負担は増える一方です。
大学時代
国立81万円(初年度納入金)
私立文系115万円
私立理系149万円
私立医歯系466万円
私立その他146万円
私立短大112万円
進路によって大きく変わってくるのが大学の学費です。
国公立大学は一律ですが、私立は学部によって差が激しいのが特徴です。
これは初年度納入金であり、さらに3年・5年学費が別途かかることになります。また、自宅外から一人暮らしで通学する場合は平均毎月10万円がかかると言われています。
公立か私立かによってかなり差があることがわかりますね。
- 全て国公立に進学した場合は、教育費の合計は1,000万円程度
- 全て私立なら倍の2,000万円以上
になると言われています。
もちろん、習い事をたくさんやりたい、留学したい、大学院に進学したい、浪人…など、これ以上に教育費がかかることは充分に考えられます。
子どもの将来を資金不足で閉ざしてしまうのは、親として悲しいことですよね。
出来るだけ早くから、計画的に教育資金を準備することが大事なのです。
なぜ、ジュニアNISAが教育資金の準備に適切か
大学進学までさせる場合は、最低で1000万円、多ければ2,000万円以上の資金が必要になることがわかりました。
急にそれだけのお金を用意するのは大変なので、ジュニアNISAはぜひ活用していただきたいところです。
妊娠・出産をきっかけに学資保険に加入するなど、これまでも教育資金の準備を念入りに行おうとする家庭は増えていますが、これからはジュニアNISAも有力な選択肢の1つです。
これまでは、教育資金の準備には学資保険がメジャーな選択肢でしたが、冒頭で説明した通りコストが大きく学資保険は良い金融商品ではありません。
一方でジュニアNISAは教育資金の準備にかなり向いていると考えます。
以下にその理由をまとめます。
非課税での運用なので、長期投資に有利
ジュニアNISAは非課税で20年近く運用できるという非常にありがたい制度です。
運用益に税金がかからないことで、長期投資での複利効果が高まります。
普通の投資って、毎年10%の利益が出つづけた(非現実的な家庭ですが)とすると、
1.1×1.1×1.1・・・
って増えていくわけでなくて、税金分があるので
(1.1-0.02)×(1.1-0.02)×(1.1-0.02)・・・
って増え方になります。
これが、1.1×1.1×1.1・・・って増え方になる効果は直感的にもかなり大きいことがわかるでしょう。
ジュニアNISAはコスト負担が軽い
金融商品の選び方次第ですが、ジュニアNISAはコストがあまりかからない同士が出来ます。毎年毎年保険会社に手数料を取られる学資保険との大きな違いです。
引き出し制限がある
ジュニアNAISAには18歳まで払出し制限があります。
この「18歳」は、一般的に子どもの進学・就職の節目となる年齢と想定されて決められているのですが、通常は不便な引き出し制限も教育資金の準備としては悪くないですね。
払出し制限が解除された後のジュニアNISA口座内の資金で大学進学の費用に充てる、留学の補助資金として使う、就職のための準備をする…など、口座の保有者である子どものために使うことが考えられます。
早いうちから投資教育を行える
ジュニアNISAは子どもの投資教育にも活用できます。「預金」に比べて「投資」にためらいがあるのは制度に馴染みがない、というのも理由の一つとして考えられるのではないでしょうか。
子どもが成長して自分で判断できるようになった時、自分自身のNISA口座を持っていれば早くから投資に関心を持ったり、金融や投資の仕組みについて知りたいと思うことは自然な事ですよね。
家庭でも会話に取り入れやすいでしょう。
また、投資にはどうしてもリスクが存在しますよね。
金融や投資におけるリスクの面でも判断力を身に着けることが出来るので、早いうちから投資のメリット・デメリットを知って、いわゆる「金融リテラシー」を身に着けるためにも効果的です。
ジュニアNISAの狙いって?
子どもであっても口座が開設できるので、家庭全体で見て非課税枠が増えることになります。
これだけでもメリットですが、このジュニアNISA制度が作られた狙い投資家にとって素直にうれしいことです。
ただ、それ以外にもジュニアNISAには狙いがあります。
これは国側の都合なので私たちとしてはただ制度を利用するだけなのですが、一応押さえておきましょう。
株式市場の活性化
NISAの制度がスタートしてから、気軽に投資を始められるようになりました。NISA口座を通して株式市場に流れているお金はとても大きなものになりました。もしジュニアNISA制度の利用者が市場全体の5%程度であったとしても、約6,000億円の資金流入が期待されるという試算がされているそうです。
親世代からの資金移動
ジュニアNISAは、口座にお金を入れて実際運用するのは親世代です。
総資産に対して貯金や保険以外のリスクのある資産が増え、投資が促進されます。
また、市場に資金が流れることになるので広い目で見た場合でも下の世代に資産が移動します。
広い意味での下の世代への贈与が行えるのです。
老人世代の貯蓄が、若い世代に引き継がれていかないって問題を間接的に改善させていく効果が期待されます。
まとめ
ジュニアNISAの基礎知識をご紹介しました。
NISA制度を使った子どものための資金準備、資金の贈与、金融リテラシーの教育…などの目的で利用することが出来るようですね。
払出しや年間投資額に制限はありますが、それ以上にメリットも多いジュニアNISA。教育資金作りの選択肢として考えてみてはいかがでしょうか。