原油ETFに投資したいとき参考にすべきこと。
今回はETFを通じて原油に投資してみたい人向けの記事です。
- 今回はETFを通じて原油に投資してみたい人向けの記事です。
- なぜWTIが原油価格の指標なのか
- WTI以外の原油指標
- 原油価格への投資仕方
- 日本国内に上場しているETF
- 原油ETFに投資する意義
- 原油ETFの代わりに金利を得ながら通貨に投資することも可能
- 最終まとめ
なぜWTIが原油価格の指標なのか
原油価格とは
原油ETFっていえば、原油価格に連動するETF(上場投資信託)です。
でも原油価格って、実は一言でいうのが難しいものがあります?
原油というのは、石油とかガソリンとかが採れる混合物であるので、金や銀みたいにきれいな重さ当たりの値段を算出するのが困難です。
そのため、産地などを指定して、原油の価格を決めるわけです。そうなれば、複数の原油価格の指標があることになります。
だから、原油ETFってどの原油価格に連動するのかってところから、話を始めます。
WTIは一番有名
原油価格っていえば、 WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)が最も有名。これは普通にニュース見ているとよく聞くと思います。
このWTIは米国のテキサス州西部とニューメキシコ州南東部で産出する原油のことを指します。
もちろん国際的な原油価格の指標の一つがこのWTIなんだけど、なんでこれが指標かといえば、それは原油の質が大きく関係しています。
原油ETFに一番深く関係するのはこのWTIなので、少し丁寧に説明します。
原油の質を決めるのは以下の2つです。
原油からいかに価値のある生成物がとれるか
原油って一言で言いますが、複数の化合物の混成物であるため、その中身はさまざま。地域によって採掘される原油の品質は異なっていて、アメリカ、マーバン(UAE)、タピス(マレーシア)などでとれる原油は、高品質と呼ばれます。
何をもって高品質かといえば、比重が軽いものの方がガソリン(や灯油、軽油などの価値のある物)がたくさん精製できるため、質が高いといわれます。
どれだけ低コストで精製できるか
原油産業は大規模な精製施設が必要な装置産業。そのため、その装置のランニング(操業)コストが安くなることは非常に重要。
その原油の精製コストに大きく影響を与えるのは、原油の中に含まれる硫黄の量(割合)。
この硫黄は燃焼させると硫黄酸化物ができるため酸性雨の原因(硫黄酸化物は水と化合すると、硫酸や亜硫酸を生じるため、これらが溶けた水は酸性になる)になります。
また硫黄酸化物は教科書にも出てきた四日市ぜんそくの原因にもなったらしい。おそろしいですね。まあこういった理由で、この硫黄の除くための装置をつける必要が出てしまいます。
当然、硫黄が多く含まれている原油は、厳重な硫黄除去が求められるため、装置のコストも上昇します。
反対に硫黄が少なければ、除去せず利用することが可能。
この硫黄の含有量も北米で採れる原油は少ないわけです。そのためスイート原油と呼ばれ、硫黄分の少なさの観点からも高品質。
ただ、WTIの産出量は少ない
しかし、WTIの産出量はかなり少ない。世界の原油産出量のうち、シェアの1%程度。やはり中東で原油は出まくっているほか、北海ブレントのほうが量的には中心なわけです。
まとめると
・原油っていうのは、当然ガソリンとか灯油とかナフサ、タールなんかを作るための素なわけですが、その質によってそれぞれの商品(資源)の取れる割合が違う。
・高い価格で販売できるガソリン等が多いほうが経済的に高品質。
・原油の精製コストも重要
・価値のある成分が多いことと精製コストが安いことから、WTIは高品質。
・それに加えて、鶏と卵みたいな話ですが、先物取引での取引が高く流動性が高い。
・だからWTIが、原油価格の中心的な指標となっているよ。
WTI以外の原油指標
WIT以外の原油価格の指標には以下のようなものがあります。
北海ブレント
北海ブレンドとは英国とノルウェーの経済水域に位置する北海油田でとれる原油の価格です。
北海油田の原油収入でノルウェーは、世界中のヘッジファンドにお金を出しまくる世界的に有名な大規模な国富(ソブリン・ウェルス)ファンドを持っていることは有名です。また北海油田の収入の配分はスコットランドの英国からの独立問題の原因にもなっています。
そのように、経済的に重要な地域(欧州全体のGDPは米国よりも大きい)にある、大量の原油に関する価格であるため重要な原油価格指標と言われています。
WTIと北海ブレントの価格差(通常はWTIの方が高い)は、米国のシェールガスの採掘状態(WTIはシェールガスと競合関係が強い)や欧州の経済状況や地政学的リスクなどの観点から分析されることも多いです。
中東ドバイ原油
中東でとれる原油の価格です。WTIや北海ブレントに比べて硫黄分が多い重質原油であるため、品質は低いとされています。
日本が輸入しているのもこれ。アジアの原油があまり産出しない(でも消費量は多い)
国は大抵中東から輸入しています。だからアジア向けの指標として機能しているわけですね。
通常時において、価格は、1位:WTI、2位:北海ブレンド、3位:中東ドバイ原油みたいになります。
原油価格への投資仕方
原油価格が2015年以降大きく動いています。これを投資機会として利用してみたいひともいるでしょう。原油に投資するには以下の方法が考えられます。
原油の現物
理屈上投資可能なだけで普通の人には無理ですね。保管ができません。やはり原油に投資するには金融商品を通じて行うのがいいでしょう(当然)。
原油関連株式
原油価格の変動を収益にしたければ、原油関連企業の株式を買うということもできます。
国際石開帝石(1605)、石油資源(1662)とか、三菱商事みたいな商社株も原油の事業シェアが高いです。天然ガスの事業構成比が高い企業もありますが、大きなくくりでは連動しやすいといえます。
しかし、株式で持つってことは、その企業の事業リスクをセットで持つということなので、原油価格自体に投資するのとは少し意味合いが異なる部分もあります。
不動産開発企業の株とREITの違いに近いものがあります。
原油価格先物
原油そのものに投資する一番一般的には方法は先物取引ですが、これは商品先物業者に口座を開かなければならないため、少しハードルが高め。
先物取引なら限月間の裁定取引とかできるわけですが、ちょっと専門的過ぎるし、ニーズはそこにはないって人が多そう。
原油価格連動型ETF
証券口座さえ持っていれば投資できるETF(上場投資信託)の方が、先物取引と比べて断然お手軽です。
原油のETFは、集めたお金を原油に投資する箱(有価証券)だと思っていただければわかりやすいと思います。
その箱の中に入っている原油の値段に応じて、ETFの価格も変動するイメージです。
日本国内には5種類のETFが上場していますので以下にまとめておきます。
海外ETFもありますが、税制とか考えると国内ETFの方が現状では有利なんですよね~
日本国内に上場しているETF
国内上場5つの原油ETFが上場していると述べました。
5つとも、ETFの価格が原油価格に連動(反対の値動きも含めて)するっていうのは当然ですが、細かい違いがあります。
現在日本に上場している原油ETFは主要なETFは以下の5ファンドです。
・WTI原油価格連動型上場投信(1671)
・NOMURA原油インデックス連動型上場投信(1699)
・ETFS原油上場投資信託(1690)
・原油ダブルブル(2038)
・原油ダブルベア(2039)
があります。
WTI原油価格連動型上場投信(1671)
このうち最も取引額が多いのは、WTI原油価格連動型上場投信(1671)です。取引量が少ないと板が薄くなるので、売買時にビット・オファーのスプレッドからいらないコストが発生しがち。その点、流動性が高いこの銘柄は使いやすいですね。ただ、長期保有の場合は、信託報酬率がほかのETFと比べて、高いのでそこが足を引っ張りそう。投資する予定の保有期間ごとに有利不利を見極めて使ってもらえればと思います。
運用会社はヘッジファンド的なイメージが強いシンプレックスですが、ETFの仕組み上問題ないでしょう。
このETFは、WTI原油先物連動するように設計されたETFです。
やはり安定のWTIですね。WTIの先物とっても決済期限ごとに複数あります。そのうち、決済期間が最も手前にある(直近な)先物に価格が連動することになります。
・国内で組成
・取引単位:1口
・連動指数(ベンチマーク):WTI先物直近限月
・為替リスクあり(WTIが米ドル建てのため円換算時に為替リスクあり、TTMを用いて円換算)
・分配:年2回
・信託報酬率:0.85%
NOMURA原油インデックス連動型上場投信(1699)
野村アセットマネジメントが組成する、NOMURA原油インデックス連動型上場投信(1699)です。このETFは、NOMURA原油インデックスするように設計されたETFです。ベンチマークであるNOMURA原油インデックスは、野村證券金融工学研究センターが算出しています。実質的に構成銘柄はWTIであるため(WTI原油先物)です。
・国内で組成
・取引単位:10口
・連動指数(ベンチマーク):NOMURA原油インデックス(実質的にWTI)
・為替リスクあり(WTIが米ドル建てのため円換算時に為替リスクあり、TTMを用いて円換算)
・分配:2月
・信託報酬率:0.5%
ETFS原油上場投資信託(1690)
ETFS原油上場投資信託は、日本に上場しているものの、イギリス領ジャージー会社法に基づいて設立された外国投資法人が発行する外国投資証券になっているというちょっと複雑な位置づけ。このETFは、ロンドンのほか、欧州の一部の取引所(フランクフルト、ユーロネクストなど)に上場されており、東京証券取引所に単独上場しているわけではありません。
・海外で組成
・取引単位:10口
・連動指数(ベンチマーク):DJ-UBS 原油サブ指数(実質的にはWTI、WTI先物を2か月ごとにロールしていく仕組み)
・為替リスクあり(ベンチマークが米ドル建てのため円換算時に為替リスクあり)
・分配:なし
・信託報酬率:0.49%
ETFS原油上場投資信託は、信託報酬率が安いのがいいですね。
この下からは厳密なETFではなくETN(ETFと異なり裏付け資産がないもの、多少の運用会社リスクがある。でも実質的にリスクはないに等しい仕組みになってるよ)になります。
原油ダブルブル(2038)
ブルは強気を示す金融市場の慣用句。原油に強気の人が買うってことで、原油価格の2倍の値動きをするように設定されたETFです。ベンチマークの算出は東京商品取引所と日本経済新聞社。
・国内で組成
・取引単位:1口
・連動指数(ベンチマーク):日経・東商取原油レバレッジ指数
・為替リスクあり
・分配:なし(ETNは基本的に分配はない)
・信託報酬率:0.8%
原油ダブルブルみたいなレバレッジのかかった商品は投資家に大人気。原油ダブルベアも原油ETFとしては2番目に人気がある商品になっています。
ただし、ETNってことと、証券取引所の需給で価格が決まりやすいってことから、指標となっている原油価格から値段が乖離することが多いってことは意識しておくべきかもしれません。ただし、この原油ダブルブル(2038)と原油価格のかい離は短期の話で、長期では連動します。
原油ダブルベア(2039)
これはかなり原油価格が下落すれば、その下落幅の2倍価値が上昇するっていう商品です。
・国内で組成
・取引単位:1口
・(逆)連動指数(ベンチマーク):日経・東商取原油レバレッジ指数に逆連動
・為替リスクあり
・分配:なし(ETNは基本的に分配はない)
・信託報酬率:0.8%
原油価格のヘッジ目的には使えるでしょうね。ETFの空売りはリスクが高いので。
原油ETFに投資する意義
インフレヘッジ
原油は国際商品(コモディティ)です。そのため、金などの貴金属と同様にインフレに強いという性質があります。
なぜインフレに強いかといえば、インフレになってお金の価値が減少しても、燃料として利用できるなど有意義なことに用いられるため、価値の保存ができる(そのためインフレになった分だけ原油は値上がりする)と考えられています。
世界中の中央銀行が量的緩和を行い、お金の価値を下げています。これにより、インフレが誘発される局面が来ると考えれば、原油ETFは良いインフレ対策になるでしょうね。
分散投資効果の享受
メジャーな投資対象といえば、債券と株式。日本ならこれに現預金を加えてもよいでしょう。
しかし、これらだけでは十分に分散効果が得られない、との分析結果もあります。
そんな時には原油ETFなどのコモディティ投資。
コモディティは債券、株式ともに相関性が(長期で見れば)低いことが指摘されています。
原油ETFはあなたのポートフォリオの分散効果をさらに高めてくれるかも知れませんね。
原油ETFの代わりに金利を得ながら通貨に投資することも可能
なお、原油に投資するイメージで原油産出国の通貨に投資するという手段もあります。原油価格が上昇すれば、産油国通貨は値上がりするので、原油ETFに近いリターンを得ることが出来ます。
また、原油ETFの場合、信託報酬というコストを払いながら投資することになりますが、資源国の通貨に投資する場合は金利を受け取りながら投資することが出来ます。
代表的な資源国通貨についてまとめた記事を掲載します。
資源国通貨の金利を狙った投資をするなら、FX業者は 下記のインヴァスト証券のトライオートFXが良いと思います。
理由は 資源国通貨を買った場合の金利は、FX会社ごとに異なるのですが、豪ドルにもっともよい金利を付けてくれるのが、トライオートFXだからです。
最終まとめ
・WTIは高品質で先物の流動性も高いため、原油価格の指標。
・国内上場の原油価格連動型ETF(ETN含む)は5種類。
・流動性が高いETFはWTI原油価格連動型上場投信(1671)
・コスト重視ならETFS原油上場投資信託(1690)
・2倍の価格変動で攻めたいなら原油ダブルブル(2038)
・原油価格をヘッジしたい、または原油価格の下落にかけたいなら原油ダブルベア(2039)
・原油ETFはインフレヘッジに有望。
よき原油投資ライフをお送りください。
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