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マイナス金利と株式市場。特に銀行株は影響が大きい



日銀がマイナス金利導入を決定

日本銀行は本日の金融政策決定会合で、金融機関が保有する日銀当座預金に0.1%のマイナス金利を適用することを決めました。

為替は円安、株式市場は一時はマイナス圏に入るなど大きく乱高下しながらも、最終的には476円高(2.8%上昇)となる大幅高になりました。マイナス金利は債券市場の低金利化を促し(日本国債は一瞬で中期ゾーンまでマイナス金利化した)、相対的に株式市場の魅力が向上する上に、企業業績にもプラス面が多いため、妥当な反応でしょう。

 

しかし、こんな日に銀行株は-2.3%と大きくマイナス。(今回導入された)マイナス金利とは銀行の日銀への預け入れ金利を指すため、それがマイナスになった以上は銀行の負担増のため極めて自然な反応。でも、マイナス予想は他にもいろいろあって、結構面白いので背景を詳しく書いてみます。

 

目次

 

以前書いた記事

為替市場の観点から書いています。

今回導入されたマイナス金利とは

銀行が預ける当座預金に対し、日銀は3種類の金利を適用します。

1.当座預金残高のうち2015年1月から12月までの平均残高に相当する部分に対しては、従来通り0.1%の金利を付与する(基礎残高)。

2.所要準備額と貸出支援基金及び被災地金融機関支援オペによる資金供給相当残高に対してはゼロ金利を適用する。

3.そして1と2を上回る部分に対して-0.1%のマイナス金利を課す。この部分がいわゆるマイナス金利ですね。

 

3の部分は、銀当座預金の超過準備に付している金利であり付利とよばれます。この付利はこれまで0.1%でした。ノーリスクに近い日銀にお金を預けるだけで、これまで0.1%の金利が付与されていたため、銀行にとって非常においしい存在でした。

 

それが今回-0.1%に引き下げられることになります。当然銀行には大きな影響がでます。銀行の株価が下がるのも当然でしょう。

銀行の資産ポートフォリオ

銀行が保有する資産のポートフォリオをざっくり考えた場合、預金=貸出+市場運用部分、となります。

この市場運用部分が、国債や株式、ETF、そして付利の対象となる日銀の当座預金になってくるわけです。

クレジットの観点からは、左辺の預金は銀行がクレジットを渡している部分であり、右辺は銀行がクレジットを取っている部分になります。

 

この左辺と右辺の倒産リスクとそれに伴う金利差(クレジットの差)が、銀行の利ザヤの源泉になります。

 

この辺細かいので詳しくない人は読み飛ばして下さい。

しかし当然、何でもかんでもリスクを取って良いわけではありません。

国債は、一応バーゼルなどの「リスク管理会計上」はリスク・ゼロですが、日銀の研究レポートにおいても、将来の金利上昇リスクは指摘されていますし、そもそもクレジットのリスクはなくとも、左辺の預金との比較では、デュレーション・リスクを取らなければならない状況です。また、これは現状日銀が量的緩和を通じて、積極的に吸い上げている資産クラスでもあります。

 

銀行の稼ぎ方

利ザヤを稼ぐためには、まずは貸し出しを伸ばすことが本質的な方法です。

ただ、貸出先の倒産リスクを制限しつつ、貸し出しを伸ばすのが至難の業であることは、現在の金余りの状況下では明らか。

これが、なかなか上手く行かないからこそ、デフレからの脱却が本格化しないとも言えます。

 

なお、金融機関にとっての悩みは、お金がないことではなくて、ありすぎること。より正確には、調達したコスト以上で運用できないお金が溢れてしまっていることです。

 

銀行は預金で資金を調達しています。

ちなみに、2015年3月末における、銀行の貸出金/預金の比率は、東京三菱UFJ銀行が66%、SMBCが75%、みずほが76%、地銀・第2地銀・信用組合等全国530余りの金融機関で66%となっています。

 

つまり、東京三菱UFJ銀行や地方金融機関で預金量の3分の2、SMBCとみずほで預金量4分の3が、貸し出しにまわっていることになります。

では、残りの部分はどうなるでしょうか?

この部分は、債券市場や株式市場など金融市場を通じて資産運用されています。銀行はお金を貸し出す機関っていう認識は正しいのですが、より汎用的に表現するなら、預金で集めたお金を様々な形(融資、市場運用など)で運用する機関と言えるでしょう。

 

銀行は預金で資金を調達しています。これは極めて低いとはいえ、金利がつけられています。すなわち銀行は預金者には金利を支払っています。

従って、銀行は預金で金利を付与する以上に、集めたお金を高い利回りで運用する必要があります。しかし、国債については、量的緩和により利回りが低下し、供給量が細る中、利益を得るのが徐々に困難になってきています。

生保のように長期金利を買えればまだ良いのですが、銀行は金利リスクを取りにくい業態であるため短期金利での運用が中心になります。

株式ETFなどのリスク資産による運用を増やさざるを得なくなってきているものの、ボラティリティの大きすぎる資産であるため、保守的な銀行としては保有額には限界もあります。

 

 

 すでに述べましたが、日銀という非常に安全な先にお金を預けるだけで、0.1%の金利(付利)が得られる日銀の当座預金は、おいしい投資先でした。

そのため、運用先がなくて困っていた資金が、日銀の当座預金に「ブタ積み」されることとなります。

 

しかし、これからは日銀の当座預金に持ち込むと、(マイナス金利であるため)逆に金利が取られる。

すなわち、銀行は両サイド(預金者と日銀)に金利を支払わなければならない状況になります。

お金を預かって金利を払い、預けても金利を払う。銀行は何とも厳しい状況です。

 

解決策は預金の返還だが

当然、今回導入されたマイナス金利で、銀行の利ザヤは更に悪化することになります。

貸出が増やすことが難しく、他の市場運用においてもリスク管理上増額が難しいのであれば、この利ザヤ悪化を解消するためには、当座預金を減らす分だけ、預金を返せば良いわけです。

 

しかし、銀行が能動的に預金を預金者に返すことは困難です。せいぜい金利をゼロにして抵抗することぐらいでしょう。

元々現在の預金金利はほとんどゼロなので、これを更に引き下げたところで、預金がそれに応じて減るとは限りません。

 

実質の預金マイナス金利が突破口か

預金にマイナス金利を適用することはなかなか難しいでしょう。公器としての位置づけが要求されるため、預金をマイナスにすれば国民的な大非難が避けられそうもありません。

 

そのため、海外の金融機関は実質的に預金をマイナス金利にするため、基本口座管理手数料をチャージします。勿論ある一定額以上の預金残高やローン、あるいは給与振込や公共料金などの出納業務を行っている口座については、「免除規定」がありますが、出納業務の手数料収入もなく、ローンによる利ザヤもなく、将来のビジネスに繋がる残高も無いような預金者からは、ある意味情け容赦なくコストをチャージし、残高がこのチャージ・コストを下回った場合、口座クローズとなります。

要は最低限の収益を銀行にくれない顧客は、顧客ではないので、出て行ってくれといっているわけです。

 

預金金利をマイナスにする代わりに、さまざまな手数料をとるやり方は、実質的に預金にマイナス金利を賦課しているイメージに近いです。ですので、これが可能ならば、ふりのマイナス金利下で苦しむ銀行が、預金金利のマイナス金利化で切り抜けられる可能性を意味しています。

 

では、付利がマイナスになった日本では、銀行は、預金者から口座管理手数料を取れるようになるでしょうか。

それができるようになれば、銀行の収益は持ち直すこともあるでしょう。

過去には、色々な銀行が口座管理手数料をチャージしようとして結果的に挫折してしまったことがありました。そのような日本のメンタリティの中で、今回はできると考えるのはちょっと無理があるような気がします。

 

不可能ならば、その影響は顧客の資金規模が小さく、優良な貸出先が少ない地方銀行(やそれ以下のサイズの信用金庫、信用組合)を中心に大きな影響があるでしょう。大規模な再編が必要かも知れません。

 

マイナス金利導入当日の銀行株が、都市銀行-1.7%、地方銀行-2.6%と相対的に大きな影響がでており、小規模金融機関が貸出先(資金の運用先)に苦しむことが懸念されています。

 

 

金利全般の低下を通じた悪影響で、銀行の投資環境は過去最悪

大手銀行の今回のマイナス金利の対象となる日銀預け金が110兆円程度なのに対し、国内債券は約85兆円、貸出金は約289兆円あります。

 

今回のマイナス金利導入は、あくまで短期金利のマイナス化しか意味しませんは。そのため、長期金利は、将来の利上げ確率やリスクプレミアムに基づいて、一定の金利水準が保たれるはずです。

しかし、マイナス金利導入によって、日本国債の金利は短期から8年金利までが一気にマイナス圏に突入しました。(10年金利ですら0.1%の金利水準です)。

これは8年以下の債券では、運用しても利益にならないことを意味します(ただし、資金の逃げ場にはなる)。

 

日銀はマイナス金利について「必要な場合、さらに金利を引き下げる」とコメントしています。

今回のマイナス金利導入で銀行にとって歴史的に困難な資金運用環境が示現することになりました。しかし、その環境はさらに悪化する恐れがあることを、上記のコメントは示しています。

 

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