外貨預金とは、レバレッジ1倍のFX投資と同じなのか?どっちが良いのか比較してみた
レバレッジ1倍のFX投資は外貨預金と同一か
FX投資をレバレッジ1倍でやれば、外貨預金と一緒っていう話を聞いたことがある人も多いと思います。そして、外貨預金よりFXの方がコストが安い、だからFX口座を解説してレバレッジ1倍投資をすればいい、という議論です。
先日、金融知識少なめの友人に、このFXのレバレッジ1倍投資と外貨預金は同一か問題について尋ねられました。
すこし理解してもらうのに時間がかかりましたが、最終的にはすっきり納得してもらえた。その際に説明した内容を元に、わたしがファイナンス的に正しいと思う結論を書いてみます。
外貨預金の図解
外貨預金とは文字通り外貨(米ドルなど)でお金を預けることです。
最初から米ドルを持っていれば、そのまま預金できるわけですが、日本で暮らすわたしたちは、通常は預金するほどの米ドルを持っていません。
そのため、日本円で外貨(米ドル)を買って、そのドルを預金します。
1ドル100円を前提にした取引イメージ図を載せます。なお、以降の説明では、日本の円金利0.1%、ドル金利2%として議論を進めます。そして金利、運用期間は1年間とします。
この取引で行っていることは、
①日本円100万円で得られる金利を放棄する
②米ドル1万ドルで得られる金利を獲得する
③1ドル100円の為替レートが変動するリスクを負う(プラスもマイナスもありうる)
という、経済効果があることがわかると思います。
ここで、金利のみに注目します。
日本円の金利を0.1%、米ドルの金利を2%とした場合、
円金利の0.1%×100万円 =0.1万円を放棄する代わりに、
米金利の2.0%×1万ドル(100万円)=2ドル(2万円)
を受け取るってことになりますね。
1,000円を放棄する代わりに2万円を得ることから、海外の高金利を享受するって表現を使うこともできそうです。
FX(外国為替証拠金取引)の図解
FXとは
FXは外国為替証拠金取引というくらいなので、証拠金を用いた為替取引のことです。以下に、FX取引の全体図を図解します。
証拠金は図でいうと、紫色の10万円で、これを元に、日本円100万円を借りて(10万円で100万円を借りるので、レバレッジ10倍)、米ドルを1万ドル買うっていうのが取引の全体図になります。
外貨預金の場合と違うのは、日本円100万円を借入で調達していることです。
そのため外貨預金では
円金利の0.1%×100万円 =0.1万円を放棄したわけですが、
FXでは
円金利の0.1%×(ー100万円) =ー0.1万円
となって金利の支払いを行うことになります。
米金利の2.0%×1万ドル(100万円)=2ドル(2万円)
はそのまま受け取れます。
そのため、経済効果は
2万円ー0.1万円=1.9万円の利益ですね。
FXのレバレッジ効果
この1.9万円は100万円に対しては1.9%の利回りとなりますが、証拠金として差し入れた10万円に対しては、19%の利回りとなります。
これは高い金利を元本(証拠金とした10万円)の10倍買ったことによるレバレッジ(梃子、てこ)効果によるものです。
外貨預金と同額の元本100万円にレバレッジ10倍をかければ、運用効率(利回り)が約10倍になるわけですね。そして、大事なことですが、値動きの影響も10倍受けることになるため、リスクも10倍になります。(値上がりも、値下がりも、変動幅が大きくなることを金融的にはリスクと表現します)
レバレッジをかけないFX(レバ1倍)の場合
レバ1倍のFX投資
FXでレバレッジをかけると、金利もリスクも、レバレッジの分だけ増加するのはわかりました。
そこで、欲張らずにレバレッジをかけないで、海外の高い金利だけを受け取りにいったらどうか、という発想が出てきます。
冒頭のレバレッジ1倍のFX投資ですね。似たような図になりますが、図を載せます。
100 万円の証拠金で100万円の日本円を借り入れるっていう謎の構図になっていますね。
一見すると、100万円でそのまま外貨を買いに行く、外貨預金の方が効率的に見えます。
外貨預金の手数料は高い
なぜこんなことをするかといえば、外貨預金の手数料が高いから。
外貨預金は為替手数料が、流動性の高い米ドルですら多くの銀行で1円ほど取られます。1ドル100円に対して1円分の手数料が取られるということは、預金額に1%ものコストがかかってしまうってことになります。さらに、外貨は通常はいずれ円貨に戻さなければならないので、往復で2円、2%もの手数料がかかることになります。
FXは手数料がかからない
一方でFX取引で外貨を買えば為替手数料はかかりません。コストと呼べるものは、買値と売値の差額であるスプレッドくらいですが、多くのFX業者で0.3銭(0.003円≒0.003%)ほどです。
コストの対比で、外貨預金のコスト2%がFXのレバレッジ1倍投資のコスト0.003%より圧倒的に高くなるわけです。
このコスト面の割安さこそが、外貨預金よりレバレッジをかけないFX投資が推奨される理由です。
外貨預金がFXより有利になる条件
これまで見てきたように、外貨預金の2%というコストがあまりにも重い負担であるため、FXのレバレッジ投資がお得になるケースが多いと考えられます。
ただし、以下のような条件があれば、例外的に外貨預金が有利になる場面も出そうですってことをまとめます。
まず、外貨預金とFXレバレッジ1倍投資の違いを整理します。
コスト面:外貨預金が圧倒的不利
金利面:借入コストがかかるため、(両国の金利がプラスであれば)外貨預金が有利
この性質を鑑みた場合、日本のように金利がゼロ近辺の場合、金利面の外貨預金の利点が限りなく薄くなります(現状はマイナス金利であるため、むしろ関係が反転している)。
逆に言えば、日本の金利が上昇して、仮に1.5%まで上昇すれば、FX投資の日本円の借入コストが負担になるという構造が重荷になる展開になります。
外貨預金で2%の金利収入が得られるのに対し
FXのレバレッジ1倍投資では0.5%(2.0%ー1.5%)
の金利収入しか得られなくなるわけですから。
むしろ、普通に日本で預金すれば1.5%の金利収入が得られる状態になっているので、何をやっているのかわからない状態。FXレバ1倍投資の謎の借入を行うっていう不自然さが、マイナスの影響として顕在化する状態です。
そして、投資期間を超長期投資(例えば退職まで30年間投資し続ける、など)にすることで、(金利に対する)為替手数料の影響を小さくすることができます。
外貨預金とは、レバレッジ1倍のFX投資の違いに対するまとめ
・外貨預金とレバレッジ1倍のFX投資は、異なる金利収入を受け取ることになる。
・外貨預金で得られる金利収入は外貨の金利そのもの、一方でFXでは外貨の金利ー日本の金利(両国間の金利差)となる。
・ただし、日本の金利がゼロ近辺である限りは、両者の金利収入は近い。
・外貨預金は手数料が高く、経済的にはFXのレバ1倍に負けるパターンが大半。
・外貨預金が有利になるケースは、(現在の金融環境を考えるあり得ないが)日本の金利が上昇し、海外との金利差が小さくなる場合。そして、高い為替手数料の影響から逃れるために、長期保有を行う。
・日本の金利が上昇し(金利差が縮小し)たら、普通に円金利を享受するか、シンプルに外貨預金を行うのが良い。
・現状ならレバレッジ1倍でのFXでしょ。
レバレッジ付き定期外貨取引という選択肢
レバレッジ1倍FXはFXの仕組みを活用して、外貨預金的利用する方法ということができます。その仕組みを自動化して個人投資が利用しやすくしたのがレバレッジ付き定期外貨取引です。
SBIFXトレードがサービス提供するこのサービスは、通常のFX取引よりわずかにスプレッドが広いものの、少額買い付けや売買レート固定システムによって外貨預金の代わりに使うのに最適な仕組みとなっています。
詳細は以下の記事にまとめています。
金利狙いでFXをやりたい人は是非活用をご検討ください。
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