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スプリントの苦しいコスト削減でソフトバンクの株価が急落



スプリントの苦戦

2012年にソフトバンクがスプリントを1.6兆円で買収した当時は、経営不振に陥っていたスプリントの回復が期待されていました。

ボーダフォンから買収した日本の携帯事業で大きく巻き返したソフトバンク(孫社長)の手腕は、アメリカでもキット通じるはずだと。

実際にスプリントは、競合他社にたいしてARPU(一人当たりの月額支払料金)で大きく劣後しており、ソフトバンクが得意の低価格戦略が採りやすい環境だったはずです。

相対的に高いARPUを持つ他社が、利益率を維持するために値下げに躊躇する中、スプリントが積極的な値下げでシェアを取れれば、日本での成功が再現できたはずでした。

 

しかし、実際に判明したことは、米国の通信企業が日本の通信業界で起きたことを良く研究している、と言うことでした。値下げには、シェアを失いたくない他社が必ず追随する構図となっており、米国の通信業界は料金引き下げ競争が過熱しました。

 

そうなると元々、ネットワークの弱さなどから顧客満足度が低いSprintは分が悪く、なかなか業績改善の糸口が見えません。2014年の年末商戦では、他社の半額の通信料を保証する「半額プラン」を導入したものの、反転上昇のきっかけにはなりませんでした。

 

スプリントがタワー削減方針の観測記事に株価が大きくネガティブに反応

2015年1月15日、スプリントがコスト削減を図るため、通信基地局を、現在利用しているクラウンキャッスルやアメリカンタワーの鉄塔から、モビリティ(Mobilitie)という別の企業の鉄塔に切り替えることを検討していると発表がありました。

同社の値下げ要求を飲んでくれない鉄塔からの切り替えを進めることで、タワーの使用を削減していく見通しです。

これについてコスト削減メリット(推定目標額は10億ドルと報道)はあるものの、ネットワークの品質維持に懐疑的な見方がある、との報道がありました。

 

 

スプリントは従来から、解約率の改善、ネットワーク品質改善を強調してきており、タワー数を大きく削減することを示唆することは発表していませんでした。そのため、同社の競争力の低下を懸念する売りと、通信品質などを犠牲にせざる得ないほど追い込まれた同社の現状に対する懸念で、株価は売り込まれることとなりました。

 

これにより、同日のタワー株は平均で前日比6%、スプリント株は同10%下落、更に祝日明けの火曜日にもスプリント株は8%下落しました。

 

同期間にスプリントの主要株主であるソフトバンク株は10%超下落しています。

タイミング悪いことにこの期間は世界的に株安が進み、リスクオフの市場環境の中でハイイールド債のCDS(クレジットデフォルトスワップ、企業の倒産確率が反映される)が拡大しました。

スプリント債権のCDSは、リーマンショックで世界中の需要が減退し、金融市場が大混乱した2008年末に匹敵する高水準に上昇しています。

 

今後の競争環境

⽶国モバイル市場は引き続き料⾦競争が過熱している状況です。スプリントのみならず、各社が料⾦競争を展開しており、同社の優位性は必ずしも認められていません。ネットワーク、マーケティング、料⾦プランなど数々の問題点が指摘されており、短期的な業績と競争⼒回復を⾒通せる状況ではありません。

スプリントは、2015年夏にネットワークのアップグレード計画を表明しました。全貌は明らかにされていないが、ソフトバンク経営陣が関与して水面下で様々な取り組み(2.5GHzサイトの活用、スモールセルの積極投資、スペクトラムオークションへの不参加表明など)が進められている模様ですが、なかなか一朝一夕に結果が出るとは思えない状況です。

 

スプリント減損について

2015年初にスプリントが資産の減損を行った際、親会社のソフトバンクはその損失を認識しませんでした(ソフトバンクは損をしていないことになっている)。

その損失額は2,500億円と多額だったため、こんな資料を作って説明しなければならない状況でした。

http://cdn.softbank.jp/corp/set/data/news/press/sb/2015/20150205_01/pdf/20150205_01.pdf

ただ孫社長も、「厳粛に受け止めており、本質的には減損すべきであろうと認識しているが、形式上は減損したくてもできない」と述べており、あくまで日米の会計ルールの違いによるものです。

 

上記の損失をソフトバンクが取り込まなくても良い状況が続けば良いですね。

 

なお、ソフトバンクは日本企業には珍しく非常にアグレッシブな財務戦略を採っており、有利子負債は11.6兆円にも上ります(そのうちスプリント分は2100億円)。

これから、米国の利上げが進むとすれば、その辺もリスク要因になりそう。

 

まあ、日本人としては応援しているのですけどね。