トレンドフォローが優れた戦略かどうかを書いてみたい
トレンドフォロー(順張り)について書いてみます。便宜上、逆張りとの対比で書くものの、両者は厳密には対立する戦略ではない(ポジションを取る時点が異なるため。同時点でポジションを取らなくてはならないってなれば対立するけど)ため、どちらが優れているかを示すことは目的としていない。
特にトレンドについての普遍的な考察を目指しつつ、FXにおけるトレンドフォローの価値について考えることを目的にしている。
逆張りは優れた戦略?
逆張り(上昇中に売り、下落中に買いのように価格動向と反対の行動を取ること、リターンリバーサル)は愛用する投資家は多い。代表的な個人投資家の行動として時には貶されるものの、逆張りには一定の合理性はあると思う。
合理性があると考える理由は、株価(便宜上株にしているが、資産価格全般をイメージして書いてます)に影響を与えるニュース(価格変動が起きうるイベント全般を指してます)がリリースされた際、しばしば過剰に反応することが知られているからだ。
株価が1,200円の株式があるとして、業績の下方修正があったとする。その場合、そのニュース(下方修正)を織り込んだ株価が1,100円だったとしても、それを下回る1,000円(仮)まで一旦下落してから、フェアバリューまで回帰していく価格動向になりやすいことはよく知られている。こうした値動きの特性を利用できるのが、逆張りのメリットだろう。
また、あまり意味の無い余談だが、未来の価格動向が完全に予見できる投資家がいた場合、その人物の投資行動は完全に逆張りになる(底値で買って、天井で売れるわけだから、当然ですよね)。
トレンドはお友達?
トレンドはフレンドと言われる。株価は上がっているときに買うものだし、下がったら売るべきという考えだ。多くの人が利用する「損きり」も広い意味でトレンドフォローだ。
ここまで下げたのだから、さらに下げるかも知れないって考えがなければ、ただ価格が下落したことのみを売る理由がない(ただ、損きりには、悪いポジションに固執することによる志向の硬直化、みたいなのを避けられるっていう心理的なメリットはあると思う)。仮に悪いニュースがあったとしても、価格が瞬時にそのニュースを織り込んだ水準に移行すると考えれば、「損きり」する理由は全くない。
つまり、トレンドフォローは、価格が瞬時にニュースを織り込まないことを前提とした戦略といえるだろう。時系列間の相関が正である、と考えているともいえる。
または、価格の動きがニュースよりも先に起きうることを前提にした戦略ともいえる。 「知ったらしまい」なんていうのは、この典型だろう。
価格とはニュースに反応して「いき(動き)すぎる」ものなのか「徐々に織り込んで(動いて)いく」ものなのか。投資をしたことがある人なら分かると思うが、逆張りとトレンドフォローのどちらが優れた戦略かは、結論の出るような話ではない。
あるときは、いきすぎるし、あるときは徐々に動く。
そのため、自分は、逆張り派とか順張り派みたいに語ることはあっても、たいていの人は対立する考え方としている人を否定しようと思って○○派を名乗る訳ではないだろう。あくまで自分にはどっちが合っている、好きだっていう意見の表明にとどまる。
優れたトレンドフォロワーとしてのCTA
ちょっと余談が過ぎた。
トレンドフォローが優れているかどうかを示す一助として、最後に優れた実戦家の例を挙げたい。トレンドフォローの代表的な戦略としては、マネージド・フューチャーズがあげられる。マネージド・フューチャーズは投資銀行や証券会社の一部のプロップディスクや 、CTA(商品投資顧問)ファンドが用いている戦略として有名だ。
CTAの長期リターンを以下に表にした
直近では金融緩和相場の影響で(多くのCTAが定義するような)トレンドが発生しにくいため、リターンは低迷している。ただ、長期で見ると優れたリターンをあげていることが分かると思う。特に2008年の金融危機時にあげたリターンは素晴らしく40%以上のプラスのリターンを計上したファンドが多数存在した。
多くのファンド・オブ・ファンズ(ファンドに投資するファンド)は、大幅な下落トレンド発生した際にリターンをあげてくれるCTAを好んでポートフォリオに組み込んでおく。
大きな市場環境悪化に対する保険のようなものだ。
わたし達も、トレンドフォロー(的)な考え方を尊重する価値はあると思う。
また、下の記事で具体的に述べているが、FXではファンダメンタルという概念が希薄で、テーマに沿った値動きが続きやすい。
こうしたFXの金融市場のなかでも特異な性質が、トレンドフォローの価値をさらに押し上げている。