10年国債入札はマイナス金利か
マイナス金利政策により、債券の利回りがマイナスになった、とよく表現されます。
この「債券の利回りがマイナス」の意味について詳しく解説します。
今回は債券の利回りってそもそも何ってことから、マイナス金利で国債を発行するってどういうことか、を説明します。
10年国債入札はマイナス金利
日本銀行のマイナス金利政策の導入以降、日本では(世界でも)金利低下が進み、10年国債の金利もマイナス圏まで低下しています。
マイナス金利が長期化することで、2016年には日本の歴史上初めて10年国債がマイナス金利で発行されることになりました。
理論上のものを思われたマイナス金利が現実経済に実現しています。
債券のマイナス金利って利子を国に支払うの?
債券のマイナス金利とはどういう意味でしょうか?
言葉の意味だけ捉えると、マイナスの利子(クーポン)ってことで、国に利子を支払う必要があるように聞こえるかもしれません。
利払い日に国にお金を支払う、などという面倒な行為を要求される、とはなんとも面倒。
ですが、マイナス利回りとは、そういう意味ではありません。クーポンがマイナスでなくても金利はマイナスになるのです。
債券の金利とは
債券のマイナス利回りを説明するために、債券の金利をまず説明します。
債券の金利とはどのようなものでしょうか?(所有期間利回りとか応募者利回りとか最終利回りとか、難しい専門用語は出さず説明します)
債券の性質
債券は以下の性質を持ちます(ほかにもいろいろあるけど、今回必要なことだけ抜き出している)。
性質1:債券は保有期間内の利払い日に、指定のクーポン(利子)が得られる。
性質2:債券は(債券を発行した主体が倒産等のイベントに巻き込まれなければ)満期日に100で償還になる。
債券の利回りとは
以下、1年で償還(満期が1年)になる債券を例に説明します(わかりやすくするために、数学上の厳密さはあえて犠牲にします)。
利子2%の債券を100で買った場合
債券の利回りって、上の例でいえば性質1からくる利回りは非常にわかりやすい。
1年間債券を保有して、2%クーポンをもらって、年間2%の利益。うん、簡単。
2÷100=0.02すなわち2%ですね。
利子0%の債券を98で買った場合
性質2から利回りは少しだけ複雑。98で買った債券が、1年後100で償還される。98が100で戻ってくるわけだから、年間2の利益が生まれ2%(本当は2÷98=2.0408%なんだけど、この記事の説明では2%に丸めます。大事なのは数学的な正しさではなくてイメージをつかむことです)。
こんな感じで、償還価格である100より安く買った分が利益(利回り)になるイメージ。
利子1%の債券を99で買った場合
性質1と性質2の複合パターン(現実は大抵これ)。
99で買った債券が1年後100で償還される。この値上がり分の利益が1。
同時に年間1%の利子が発生するのでこの利益が1.
合計2の利益で2%利回り(何度も言いますが、これも厳密にはもうちょっと細かい数字になりますよ。でも今回の記事には必要ないので無視)。
ここまで、見ていただいたのでわかるかと思いますが、債券に投資した場合の利益って、
・利子(クーポン)
・100で償還されることによる価格変動の利益
の2つで構成されているわけですね。
別の言い方をすれば、債券の利子(クーポン)って債券の性質を決めるものの、債券の利回りにはある意味無関係なのです。
10%の利子がつく債券を98で買うより
1%の利子がつく債券を80で買う方が、利回りが高くなるわけですから。
ですので、債券を発行する側(国債なら国、社債なら企業)は、債券投資家のニーズに合わせてクーポンを決めて、債券の発行価格で債券の利回りを調整するわけです。
国債のマイナス金利の意味
ここまで来れば、マイナス金利の意味まであと一歩です。
今回の債券発行がマイナス利回りでの発行だとしても、利子がマイナスになるわけではありません。
利子は、国債に入札する機関投資家のニーズを見ながら、(ある意味適当に)0.05%なり、0.1%なりの利子をつけてあげればよいのです。
その代わり、国債の発行価格を(仮に)120みたいに100を上回った価格にする。
そうすれば、120で発行した債券が100でしか返ってこない(債券の発行者である国からみれば、100しか返さずに済む)ため、マイナスの利回りが実現するわけです。
まとめ
・債券の利回りは、利子(クーポン)と償還損益(償還価格と投資価格の差)で構成されているよ。
・だから、利子はただちに利回りを決めるものではないよ。
・マイナス金利にするには、利子はつけてあげて、その分(以上に)発行価格を高くしてあげればいいよ。
以上です。分かりにくければ、ツイッター等でご質問いただければご説明させていただきます(真夜中の返信になるかも)。