欧州中銀もQE発表、スイス中銀からのバトンがつながる
ECBが量的緩和を発表
世界的に緩和競争が続く中で欧州中銀(ECB)も予定通り量的緩和(QE)を発表しました。
欧州にデフレ圧力が強いのは、ECBの緩和姿勢が弱いことが主要因とみられており、ここでQEに踏み切るのは自らの失敗を認めることに等しく、苦渋の決断だったでしょう。
先んじて緩和的な金融環境を構築した米国は量的緩和の巻き戻しを進め、2015年は待望の利上げに転じるとみられており、(米国ならではの優位性がそのほかにもあったにせよ)早期の金融緩和が奏功した形になっています。リーマンショック後の金融危機時に米国FRBが量的緩和を導入して以来、約6年遅れの導入となります。
量的緩和の内容は?
欧州中銀ドラギ総裁の会見内容から量的緩和の内容は以下の通り
・ECBの資産購入は現行のカバード債、ABSを含め月間€60bn、国債/SSA
債はそのうち€45bn。
・購入は2015年3月から2016年9月まで(国債、SSAは総額約€800bn)。
・購入の12%がエージェンシー債。つまり国債€700bn、SSA債€100bn。
・購入の上限は発行体ベースで33%まで、銘柄ベースでは25%まで。
・年限は2-30年。ネガティブイールドの債券も含む。
・リスク負担は20%がECB、80%が各国中央銀行。
・ギリシャ債の購入は7月から可能。
ポイントとしては
・前日にリークがあったと報じられた月刊の資金供給量は500億ユーロ、ドラギ総裁の会見では600億ユーロと若干の上振れ。
・国債の年限が30年という超長期債の購入まで示唆しており、強烈な時間軸効果を目指していること。
・現在、再度不安定化しているギリシャの国債購入の可能性を示したこと。
でしょう
この内容は為替市場の期待を若干上回っており、ユーロは下落(対円レートで▲2円以上発表前から下落し一時134.5円割れ)。
当然ながら債券は買われ、ドイツの10年金利はヒストリカルな最低レベル(債券価格では最高レベル)である0.44%程度。
株価は好感しており、NYダウは130ドル高の17681ドル程度まで上昇しています。
世界中で緩和競争
こうした動きに備えていたスイス中銀は先日、対ユーロ1.2の防衛ラインを解除。併せてマイナス金利をより深くしており、今や10年金利までマイナスの状況。
昨日は完全に予想外のカナダ中銀の75bp(0.75%)もの大幅な利下げ。
本日はデンマーク中銀が預金(譲渡性預金、CD)金利を15bpポイント引き下げてマイナス0.35%とするなど世界中で金融緩和競争が勃発中。
先日ゼロ金利に踏み込んだスウェーデンの財務相も
「スウェーデンへの影響はまだ分からない」としながらも
「これは未踏の領域であり、欧州の物価への影響がどのようなものになるか正確には分からない。スウェーデンへの影響は、スウェーデン中銀の今後の行動次第だ。スウェーデン中銀も非伝統的手段の利用について協議している」
としており、量的緩和に踏み込みそうな勢い。
独銀行連盟の「ECBの量的緩和は資産価格バブル引き起こす可能性がある」というような意見は、デフレ圧力が強い世界では無視されがちです。
こうした状況下で利上げに向かう米国の一人勝ち感が高まっています。