日本の債券市場って株式市場と違って本当に値動きの少ない退屈なマーケットです。
ボラティリティ(価格変動性)で言ったら、株式のざっくり10%程度(時期により大きく異なる)の本当に動かない市場なのです。
カネ余りの運用難を背景に、大手の機関投資家が常に買場を探している一方で、売り手はほとんどいません。多くの投資家にとって、債券は買ったらそのままポートフォリオに埋めておくものなので。
しかし、そんな眠たい債券市場ですが、時々は大きく動くことがあります。
今日の債券市場は、まさにそんな日でして、10年物国債は0.645%で始まったあと、一時は0.68%まで急上昇。
背景にあったのが、公的年金改革を指揮する伊藤隆敏教授の発言です。
東京外為市場・午後3時=ドル102円前半、公的年金運用改革への思惑や株高で円売り | 外国為替 | Reuters
伊藤先生は以前から、年金基金が金利リスクを取りすぎている(国債等の債券を買いすぎている)ことを問題視しており、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人 120兆円以上の年金資産を運用する巨大機関投資家)は国内債券の一部を直ちに市場で売却すべきだ、と発言しました。
GPIFの資産配分の見直し自体は以前から議論されており、債券の保有比率を引き下げることはある程度マーケットも織り込み済みでした。しかし、それはあくまで償還になった債券の再投資を別資産で行うことにより徐々に債券の構成比を引き下げる、といった穏健な手段を想定する人がほとんどでした。
そんななかで、直ちに債券を市場で売却すべきって言われたらマーケットはもうびっくりです。証券会社のディーラーはいずれ来るかもしれない、巨大投資家の売りに備えて、今からポジションを圧縮しなければならないし(債券市場は株式市場と違って流通市場が発達していないため、投資家が売却したい場合は証券会社に引き取ってもらう)、それを見越した仕掛け的な売りが債券先物市場で観測されていました。
伊藤先生は予てよりのGPIF改革論者で、福田政権時代も年金改革に取り組んだもののねじれ国会のため断念しなければならなかった経緯もあるようです。今回の政権は衆参両院に磐石な基盤があるため、再度のチャレンジはかなり本気なようです。
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