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外債投資がFX市場に与える影響は?ヘッジのあり・無し次第です



外債投資がFX市場に与える影響

最近、日本の低金利から機関投資家が外債投資を増やすというニュースが増えています。この外債投資がFX(為替)市場に与える影響についてですが、単純に影響ありともなしとも言い難いものがあります。

というのは、外債投資といってもそれが、為替ヘッジありで行われるのか、ヘッジ無しで行われるのかでその効果は全く違うからです。

今回は、そのことについてまとめてみます。

なぜ、機関投資家は為替ヘッジをするのか

日本は世界で有数の低金利の国だ。日銀の異次元緩和に続き、マイナス金利の導入によって、長期金利までマイナスになっています。日本より名目金利が低い国(地域)はスイスなどほんのわずかです。

そのため、金利水準が極端に低下した日本のような国の機関投資家は、海外のより高い金利を得て資金運用の利回りを高めたいとの誘因を持ちます。なかでも保険会社(特に生保)などには取りわけ傾向が強くなります。

利回り収入というのは、売却益などと比べて会計上の印象が良かったり(継続性が高そうに見える)、(国によって異なるが)税務上有利に働いたりする可能性が高くなっています。

 

 

日本の10年金利がマイナスの現在、米国なら1%後半、オセアニア通貨ならさらに高い金利が見込める現状を考えると、外債は一見魅力的に見えるでしょう。各機関投資家は一斉に外債への投資を増加させようとしています。

 

ただし、注意しなければならないのは、(当然のことではあるが)こうした一見有利に見える外債の金利は外貨(たとえばドル)ベースで支払われることです。

また、満期時に償還される元本や満期を待たずして売却されるケースでの売却金額も当然外貨で計算されます。

そのため、当然為替リスクが存在することになります。

機関投資家の運用資金は円建てで調達されている

機関投資家の運用資金源は多くの部分が円建てで調達されています。

生命保険会社の運用を例に挙げると、生保の運用資金は個人(契約者)から集める生命保険です。

日本の契約者から保険料を取るので、円建ての収入になるのは当然ですね。海外にも契約者はいるものの、生命保険の国内市場は海外に比べて圧倒的に大きいので、日本の生保が得ている保険料収入はほとんど円建てになります。

 

この生命保険(の契約金)は、生保にとって運用資金源であり、将来保険の受取人に対して返さなくてはならない長期の負債でもあります。

この負債は保険の契約者に約束した利回りを付けてあげなくてはいけません。

この利回りが負債の利回り(予定利率)と呼ばれ、これよりも高い利回りで運用することが、生命保険会社の利益にとって決定的に重要です。

 

調達した負債(生命保険契約)よりも高い利回りで運用できれば、その差額が利益になります。負債コストを(無リスクの)国債の利子率が上回る世界では、金融機関の運用は簡単です。ただ、国債を買えば、予定利回りをクリアーできてしまうのですから。

 

だが、日本国内の低金利による運用環境の厳しさは冒頭の通りです。

そこで海外の金利に頼りたくなるのだが、外債は外貨建て、詳細返さなければならない負債(保険金)は円建てです。円高になれば、投資資金が目減りして、負債が返せなくなる(損失を被る)。

すなわち、海外の高い金利を得るために、為替リスクを負うわけです。

 

ただでさえ、あくまで理論上(金利平価説)であるが、高金利通貨の為替レートは減価しやすいとされています(円高になりやすい)。実際は市場の力学で決まるわけだけど

高金利通貨を買うことは、通貨の値下がりで損失が発生しやすい投資を行っているということ、とも言えます。 

 

本来は、調達した負債(運用資金源)と運用資産は同一の通貨であれば、為替リスクを取らずにすみ、運用が楽なのです。

 

なんとか、為替リスクを取らずに、外債により海外の金利を享受できないか。

そのために、存在するのがヘッジ付外債です。

ヘッジ付外債の特徴

以下、米国(米国債、米ドル)を例に述べます

ヘッジ付外債は、米国債に投資しつつ、為替市場で米ドルを売却(日本円を購入)という取引を行うことで為替リスクを回避します。

為替が円高に振れて(ドル建て)米国債の価値は毀損しても、米ドルを売却したポジションから利益が出るため、為替リスクなし、ということです。

 

若干細かい説明になるが、ヘッジ付外債は、ヘッジを行わない外債(オープン外債)に比べ、(為替市場の変動が無ければ)収益性が劣ることが普通です。

それは、米ドルの売却(円の購入)というポジションを保有するには、日米の短期金利差分のコスト(金利)を支払わなければならないからだ。そのため、日米の短期金利が米国の方が高い状況下では、その差額分を米国債のリターンから減じたものが、ヘッジ付外債の(想定)リターンとなります(この辺は金利の期間構造の話などを簡略化して書いているため、ざっくりながして下さい)。

 

それでも、為替リスクを排除して、少しでも日本と金利との比較し高いリターンを得られる可能性があるヘッジ付外債は、機関投資家の主要な投資対象の一つである。

 

 

ヘッジ付外債は円相場に影響しない。しかし金利上昇局面だと・・・

ヘッジ付き外債投資は、米国債購入のためのドル買いとヘッジのドル売りがセットのため、為替相場に影響を与えません。

 

ただし、このヘッジは為替リスクをヘッジするのみ。そのため金利の変動はヘッジできていないのです。
米金利は(足元では右往左往しているが)長期的なトレンドとしては上昇局面にあると見なされています。2015年末にはFEDが政策金利の引き上げました。今後も経済の動向をにらみながら、徐々に政策金利を引き上げていくことでしょう。

そうした環境下では一般的にヘッジ付外債は、有利な商品とは言えなくなります。金利の上昇は債券価格の下落を意味するため、為替では損失が発生しなくても、債券価格で損失が出ることになるからです。

ヘッジをしない外債投資は円安要因 

一方で、ヘッジを行わない外債のリターンの性質は、ヘッジ付外債とはだいぶ異なります。米金利が上昇する局面では、米ドルが上昇しやすくなるため、債券単価の下落を為替の利益が補う可能性が高まるからです。

金利上昇による債券単価の下落と為替の利益、どちらが大きいかという議論は、投資する債券の年限によって異なります。年限(正確にデュレーション)が短ければ為替の影響が大きく、長くなればなるほど債券単価の影響が大きくなります。

しかし、確実に言えることは、ヘッジ付外債よりも金利の上昇には耐性(為替が補ってくれる)があるということです。

こうした環境下では、ヘッジをかけない外債投資の比重を各機関投資家が増やすことが予想されます。

 

そして、ヘッジをかけない外債投資は、そのまま外貨買いと同じ意味になるので、円安要因になります。

機関投資家が外債投資を増やすって言っても、それがヘッジ付きかヘッジ無しかで、為替市場に与える影響は大きく異なるわけですね。

 

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