なぜ大和証券がファンドラップCMを連発。対面証券の唯一の武器
大和証券のファンドラップCMは名作じゃない?
大和証券のラップ口座のCM結構面白くないですか?
大和証券といえば、人気絶頂期のエビちゃん(モデルの蛯原友里さん)だったり、プロゴルファーのりょうくん(石川遼さん)だったり、ギャラの高い有名人を起用した贅沢なCMが有名。
それで今放送中のCMがこれ。
渡辺謙、新CMで吹越、滝藤、橋本と豪華競演 裏切り者を探すサスペンス仕立て 大和証券「ダイワファンドラップ」新TVCM「裏切り者がいる」編
大和証券のファンドラップへの力の入れようがわかる、素晴らしいCMだと思います。
今回はなんで、ファンドラップっていう証券会社の1事業にこれほどフォーカスしたCMを作ることになったのか、その事業の重要性について書いてみます。
証券会社の収益構造
証券会社の収益は、
1:顧客の売買高に比例する売買手数料型収益
2:顧客資産の管理等から発生するストック型収益
3:信用取引時に発生する金利収入
4:投資銀行ビジネスから発生する引受等手数料
に大別できるとよく言われます。
大手証券(野村証券、大和証券、SMBC日興証券)などの対面式証券会社の収益構成は、1990年には株式の売買手数料が中心である委託手数料が48%を占めていました。まさに株を売買させる株屋ってイメージですね。
それが、2014 年では 16%と減少します。
この間に、大きな事業構造の転換が進んでいることが分かりますね。
この転換って、株式売買手数料偏重の事業モデルから、顧客の預かり資産の管理などから得るストック収益の拡大へシフトが進んでいるってことになります。
株式等の回転売買の限界
1990年型の証券会社のビジネスモデルである顧客の売買手数料で稼ぐスタイルはなぜ限界を迎えたのでしょうか。
売買手数料型収入を増加させるには、
・顧客売買回転率を上昇させる
・売買手数料率を引き上げる
という2つの方法が考えられます。
しかし、オンライン証券の台頭によって回転売買がしたい客はネット売買に流れます。
そして大手証券に残った顧客の高齢化、必然的にニーズが株式回転から合わなくなります。もう顧客売買回転率を上昇させることは難しいですね。
また、売買手数料の引き上げは、オンラン証券の台頭のきっかけになった手数料自由化からの流れを踏まえれば一層困難な道としか思えません。
すなわち対面証券ビジネスの収益力改善を考えると、回転売買型事業構造からの脱却は不可避な状況でした。
準大手、中堅中小証券は一層顧客の高齢化が顕著
準大手、中堅中小対面証券は顧客の高齢化が一層深刻です。準大手証券である東海東京証券では、顧客年代別構成比率を開示しています。
東海東京証券では、いわゆる高齢層と言われる 60 代以上の顧客が 14年3期末時点で 57%を占めています。
日本の高齢者への富の集中すごいですね。若年層がネット証券に流れている影響も大きいわけですが。
高齢者向けには手数料が稼ぎずらい状況へ
高齢者向け投資勧誘ルールは強化される方向にあります。
2013 年 12 月 16 日に日本証券業協会は、高齢者へリスク商品を販売する際の自主規制規則及びガイドライン(業界統一の販売・勧誘ルール)の適用を開始しました。
また、金融庁でも、金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針を改正して、高齢者向けの投資勧誘ルールを厳しくする規制強化を行っています。
具体的には、75 歳以上を目安とする高齢顧客について、有価証券等投資にあたり役席
者自ら顧客と面談が必要となるなどの特別対応を取る必要が出てきます。
また、証券会社によっては、高齢者取引の際には、家族の了解を取る等の社内ルールなども設けている模様です。
これらの規制強化を考えると、証券各社は株式や投資信託の回転売買を顧客に提案する
のが困難になっているもの納得。株式の回転売買で手数料を稼ぐビジネスモデルは、もう通じなくなっているわけですね。
大手はファンドラップに注力
そこでファンドラップですよ。
ファンドラップとは、投資家の運用目的やリスク許容度をヒアリングし、証券会社などの金融機関が資産配分や商品選択、購入までを代行するサービスです。
また、通常の株式や投信の売買と違って、投資家は資産配分の見直しをコスト無しに行えるのも特徴です。
ラップ販売においては、顧客へのヒアリングや運用報告を定期的に行い、適宜資産配分を見直す。継続的な顧客との対話によって顧客ごとのライフサイクル、資金ニーズな
どを把握していることが最も重要となる。
これは極めて大手証券向け。対面販売で顧客と面談しながらのコンサルティングが価値を持つことになるわけですから。
こうして、ネット証券に対抗する武器を手に入れた大手(対面)証券は、ファンドラップを最優先の商品に位置付けていくことになります。
手数料率は 1.5~2.5%程度の商品
ラップ口座を契約する際のコストは、
・投資一任運用サービスに係る費用(投資一任受任料)
・有価証券の売買や管理に係る費用(ラップ手数料)
の合計になります。
運用資産のリスク水準や契約金額の大小で手数料水準は変動するものの、投資一任受任料は概ね 0.5%~1%前後、ラップ手数料は 1%~1.5%前後、合計で 1.5%~2.5%程度の年間料率といったイメージです。
これは、一般的な株式やノーロードが増えてきた投資信託の売買に係るコストよりは高い。すなわち証券会社にとっては高収益。
投資家にとってもメリットはあり、投資初心者などがライフサイクルにあった最適な商品を担当者と相談する中で選択できる、といったサービスなどが受け入れられていると言われています。
ファンドラップは投資家若年層にも人気
このブログは20代から40代くらいの人に多く読まれているのですが、世の中的には投資若年層っていうと40~50代みたいです。そしてファンドラップは投資若年層にも大人気。
年金不信などから長期の資産運用を考える投資家に受け入れられているようです。
営業員のインセンティブも預かり資産ベース
証券会社のノルマってどのくらい手数料を稼いだか、で評価されそうなイメージがありますが最近ではそれも変わっている模様。
最近では大手証券は営業インセンティブを売買手数料ベースから顧客資産ベースなどへ重点を移している。
手数料を稼いだ人から顧客からたくさんお金を預かった人へ評価する人を変えているわけです。投信などの回転売買から上がる売買手数料に関しては、評価しない企業も増えているらしい。
証券会社はストックビジネスに移行しているわけですね。
ラップ商品は、株価変動などによる解約率が相対的に極めて低い商品であり、ある意味究極のストックビジネス。
証券各社の戦略とも相性が良いわけです。
大和証券は早期にラップ口座に力を入れており国内首位でしたが、最近では野村証券の追い上げに苦戦中。
ファンドラップのCMがさらに増えるかもしれないですね。
関連記事