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株式投資やりたいなら、まずリートをオススメします



リートはファイナンス入門に最適

リート(不動産投資信託)は株式投資への導入として適切な商品だと思っています。こんなことを書くと、リートなんてスポンサー会社のゴミ箱だ(親会社(的)なディベロッパーが開発した不動産を高値で買い取るための箱、みたいな意味)なんて思う人もいるかも知れない。実際、そういった悪評にまみれたリートはあるものの、現在の悪評は必ずしも投資不適格を意味しないだろう。むしろ、悪評を覆す余地があることは、(悪い評価がすでに株価に織り込まれているため)アップサイドの可能性につながる(森ヒルズリートみたいにね)。

 

わたしがまずリートから、って思っている理由はリートの事業構造のシンプルさからファイナンス的な考え方に慣れるのに最適だと考えているからだ。

 

増資をどう評価すべきか

増資は、資本を調達し(株式を増やし)新規投資等を行う行為を指す。この増資を評価することは、企業の一連の資金調達からその資金の使い道を評価することであり、株式評価の最も本質的な部分の一つでは無いかと考える。

 

一般に企業が増資を実施すると株価は下落する。その簡単な(あまり正確で無い)説明として、増資しかことで株式数が増え、一株当たりの利益が希薄化したから株価が下落した、というものがある。

発行済み株式数が10%増えました→一株当たり利益が10%(正確には9%くらいだけど)減りました→だから株価は10%下落しますってやつ。

これは何となく正しそうに感じるけど、やはりすこし正確さに欠ける。

この計算方法だと、増資により調達した資金を一切評価していないことになる(増資した資金をすべて捨てている計算になっている)。

 

企業は増資で調達した資金を何かに使い、たいていの場合その何かにより、多少なりとも収益を獲得する。

なのでより正しくは、増資により調達した資金によって獲得できる収益増加効果が、株数の増加による一株当たり収益の下落効果を補え無い場合、株価は下落する(べき)といえる。

より一般的に表現するなら

増資資金の投下資本収益率(利益の増分÷増資資金)その企業のROE(利益÷資本)

の関係が、その増資の評価(利益が希薄化するか、しないか)を決定するといえる。(初心者の方は読まなくて大丈夫です)なお、詳しい人に突っ込まれないように一応書いておくと、ここでいう増資資金とは単に増資して調達した資金のみでは無く、その企業の資本構成が変わらないように借入金も加えた金額を指している。

増資資金の投下資本収益率(利益の増分÷増資資金)その企業のROE(利益÷資本)

だとしたら、一株当たりの利益は変わらないことになり、おそらく株式価値は変わらない(再投資事業のボラティリティとか細かいことを言い出したらキリが無いので、特段言及が無い限りは気にしないでださい)。

増資資金の投下資本収益率(利益の増分÷増資資金)その企業のROE(利益÷資本)

なら一株当たり利益は上昇

増資資金の投下資本収益率(利益の増分÷増資資金)その企業のROE(利益÷資本)

なら一株当たり利益は下落することになる。

 

だから、増資はその資金の使途が重要なのだ。

 

でも、現実に増資を評価するのって難しいよね

株式投資をやっているひとならすぐわかることだが、もっとも株式市場に嫌気される増資の資金使途は借金の返済である。

これは、借金返済による支払利息の軽減効果が低金利の環境下では小さいため、通常株式が増加するマイナスの影響を十分に補うことができないからである。このほかにも、増資による借金返済が良くない理由として、

・資本が増えて借金が減るため、財務レバレッジが下がりROEが低下する

・投資家の期待が乗っているため資本コストの高い株式によって、コストの低い借金を返済するのは良くない

などの説明の仕方もあるだろう。

いずれにせよ、増資により借金返済はわかりやすく、ダメだ(ただ、企業の倒産確率がすごく高まった場合などは、倒産コスト抑制の観点から増資による借金返済も正当化されるだろう)。

 

しかし、このようにわかりやすく評価できる例ばかりではない。むしろ、たいていの場合、その増資資金の使途を正しく評価するは難しい。

 

・増資資金で、工場を建設します、それによって生産能力(ほぼ売上)が●●%増えます。

・増資資金は、工場の生産性向上に用います。それにより、コスト削減効果が●●億円見込まれます。

などと言われても、それを客観的な根拠を持って判断することは、通常外部の人間にはできない。

それも当然である。市場環境や技術動向、競合他社の状況など外部の人間とは比較にならないほど情報に恵まれている経営者でも、しばしば設備投資のタイミングを誤る。むしろ、市況のピークで過大な設備投資をしてしまうことが多く、その後の需要減退期で苦しむケースが多い。

企業が大規模な設備投資に踏み切ったときが業績のピークってことは、(すこし悪意のある見方かも知れないが)まあ良くある。

市況の底で設備投資を行ってきた実績がある信越化学工業やサムスンなどは、まれな例といえるだろう。

 

だから増資の評価は難しい。情報強者である企業ですらよく間違えるのだから。

 

でも、リートの増資は評価しやすいよ

一般事業会社と比較し、リートの増資は評価しやすい。

リートは増資し、不動産を取得するが、不動産の取得を評価するとことは、企業の設備投資を評価することと比べて、ずいぶんと簡単だ。その理由は以下の通り

1.客観的な投資実績が評価しやすい

不動産の(厳密には同じものはないものの)同様の物件の取引実績などから、客観的な価格が算出しやすい。

不動産はキャップレート(不動産から得られる収益÷取得価格)で評価されるが、リートが増資して取得した物件が、同様の物件の取引事例からみて明らかに割高なら、その増資は全く評価できない。ましてやそれが、スポンサー会社やその関連会社から取得していたら、利益相反的な意味でかなり筋の悪い増資である(こういうことをするからリートはゴミ箱などと言われる)。

こういった増資は全く評価できず、株価(投資口価格)は適正レンジを下方にシフト

させざる得ないだろう。

2.収益の評価が容易

不動産から得られる収益は、事業会社の設備投資から生み出されると比較した場合、ずいぶんと安定している。

テナントが退出してしまうリスクや値下げ交渉をうけるリスクはあるが、せっかく作った工場から一切収益が上がらないケースすらある事業会社の投資活動よりは、遙かに安定している。

3.資本と負債のバランスがどのように配当に影響するか実感できる

個人的にこれが最も重要だと思う。

不動産価格100億円、キャップレート5%の物件がいくつも存在する世界を前提に考えたい。負債の利子率は(慎重に)2%としておく。

 

1.増資により100億円調達した場合

100億円の物件が1つ手に入り、それが年間5億円の収益を生み出す。

2.増資により100億円、負債により100億円調達した場合

100億円の物件が2つ手に入り、それが年間10億円の収益を生み出し、負債の利払いとして▲2億円の支払いが生じる。すなわち8億円の利益が生まれる。

 

大事なのは1のケースでも、2のケースでも、増加する株式(投資口)数は一緒だと言うことだ。

同じだけ、株数が増加するのに生み出される収益が2のケースの方が大きいため、1株当たりの利益は当然2のケースの方が大きくなる。

リートは収益のほぼ100%を配当に回すため、適切なレバレッジをかければ(負債を混ぜれば)配当利回りが高まることが実感できるはずだ。

このあたりの、資本がメタボ状態の企業が、それを解消しようとした際に株価が大きく上昇することと全く同じ理屈になる。

 

以下余談だが、この辺の基本がわかると、

リートがすでに保有している物件の利回りが7%だとして、市中で取引されている物件の利回りが6%だとした場合、リートがどの程度レバレッジをかければ、配当利回りを向上させる増資ができるか、なども簡単に計算できる。

市中の不動産の利回りが高く(価格が安く)、リートが保有する不動産の利回りが低い環境下では、リートは増資することで配当利回りを高めることができる。反対に、市中の不動産価格が高くなると、リートは増資により配当利回りと高めることが難しくなる。

最近リートの地方物件の取得が増えている理由も納得ですね。

 

追記

2016年に入って株式市場は大荒れですが、リートは相対的に堅調なリターンになっています。これは、配当利回り重視で投資している投資家が多いためで、配当利回りと不動産の賃料収入をベースにした分かりやすいバリュエーション評価方法が投資家に受け入れられているからだと思われます。

そうした、証券評価の基本を学べるのがリートのメリットと再度強調しておきます。

あと、リートはダメ物件が多いってコメントを頂きましたが、そのことは市場に織り込まれているので大きな問題にはならないと考えています。

2016年1月、日銀がついにマイナス金利を導入しました。この記事で書いたように、リートは負債を積極的に活用する業態なので、メリットは大きいです。 

 

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