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スイスフランの特徴、FX市場におけるキャリー通貨としての位置付け



スイスフランの特徴

スイスは特徴的な国です。

主要な産業はオメガやロレックスなどの時計ブランドが有名な精密機械産業。また、スイス銀行との総称(スイス銀行という銀行があるわけではない)で有名な小規模なプライベートバンクに加えて、UBS、クレディスイスみたいな巨大な金融機関もあって、金融業が盛んです。

地理的には、ヨーロッパの山岳地帯にあって、人口は800万人ほどの小国。国内政治体制は直接民主制を採用しており、外交戦略は永世中立国(その代償としてか先進国としては珍しい徴兵制も現存)。

こうした独自性もあって、スイスフランは国際的に決済に使われるメジャーカレンシーの一角として、FX市場で一定の地位を占めています。

 

低金利通貨としてのスイスフラン

スイスは隣(というか周囲)にユーロという経済規模の大きな通貨圏があるため、対ユーロのレートが重要視される傾向があります。

そのユーロでは、経済的に低調であり物価が持続的に下がるデフレ色が強く、ギリシャなどの加盟国に財政問題があるため、大規模な緩和策をとっています。

量的緩和の競争では、経済規模が重要なのでとてもユーロ圏に対抗できないスイスは、大幅なマイナス金利を実施することで通貨高を食い止めるっていう金融政策を継続しています。

ユーロ圏とは陸続きで都市間の距離も近いので、スイスフランが高くなると消費者は、ユーロ圏の国(特にドイツが多い)に買い物に出かけてしまうみたいなんですよね。ものすごく分かりやすい通貨高のデメリットが存在しているわけです。

詳しくはこちらのエントリーをご覧ください。

安全通貨としてのスイスフラン

スイスは永世中立国としての性質がなんとも特徴的です。永世中立を宣言するだけでなく徴兵制を背景にした一定の軍事力の裏付け(ヒットラーも損害を嫌って侵攻を断念したらしい)もあるなかで、周囲にユーロ圏という友好的な国々に囲まれ地政学的リスクは低いと評価されています。さらに、政治・経済・財政的に安定している点や自由で開かれた金融市場を持っている点などが評価され、安全通貨としての地位を占めています。

そのため、世界に戦争や紛争、大規模な災害などが起きると、スイスフランは値上がりする傾向を持っています。

日本円と似ていますね。

キャリー通貨としてのスイスフラン

スイスフランは 、低金利であるとすでに述べました。

そのため、スイスフランを借りて(FX取引の場合は売って)、高金利通貨を買うっていうキャリートレードが行われます。資金調達に使われる通貨ってことでファンディング(funding)通貨などと呼ばれたりします。

スイスフランを借りるって取引は、FX市場のキャリー取引ような金融的な取引ばかりでなく、周辺国の住民が低金利のスイスフラン建てで住宅ローンを借金するっていうような生活に密接な分野にまで広がっています。

なお、こうした低金利通貨を借りて高金利通貨で運用するって取引は、好況時に機能するので、スイスフランは好況時には(キャリー取引による売りが増えることで)下落することになります。

反対に、不況時や上で述べたような危機時には上昇するわけです。

この辺も日本円と近い位置づけですね。

 

スイスの金融政策

スイスの中央銀行はSNB(スイス中銀)が決定

為替レートには金融政策が最も影響を与えるので、ここからはスイスの金融政策の決まり方を見てみましょう。

スイスの金融政策を決定機関(中央銀行)はSwiss National Bank(スイス中央銀行)です。略称のSNBとしても有名で、主要な中央銀行の一つに数えられています。

国(スイス連邦)は出資しておらず、資本金の約半分が公的機関による出資となっており、残りの株は上場(証券市場で取引)しているという珍しい中央銀行です。さらにスイス中銀の株主は、ほとんどが個人投資家らしい・・・

FX投資家ならちょっと中央銀行の株主になってみたい気もしますね。

スイス中銀の金融政策の目的

スイス中銀の政策目標は物価の安定です。

その手段として、インフレターゲットを採用しており、目指す水準はCPI(全物価ベースの物価上昇率)は2%以下となっています。

伝統的にはマネタリーベース(M3)を重視した政策運営を行っていましたが、1990年代から、マネタリーベースとインフレ率が連動しなくなったため、現在のインフレ率を重視した政策運営にシフトしています。

スイス中銀の政策金利の考え方

スイス中銀は、政策金利をスイスフランの3ヶ月物Liborを政策金利の基準としています。このスイスフランlibor(3か月)を1%の幅でターゲットを示し、その中央値へ誘導することを目標としています。

スイス中銀の意思決定機関

スイス中銀の意思決定機関はGoverning Boardです。開催のタイミングは四半期毎(3、 6、 9、12月)になっています。

この会議の中心的な議題は、 スイスフランの3ヵ月物 Liborの目標値をどのレベルに誘導するかってことです。これが政策金利の(公開市場操作を通じた)誘導目標です。

金融政策評価(monetary policy assessment)発表時に金融政策の変更が行われることが、基本的な在り方になっています。しかし、正当な理由がある場合には、それ以外のタイミングで あっても政策変更が可能なっています。

政策決定の発表時間は、日本時間で17:30(冬時間)、16:30(夏時間)です。

Governing Boardの構成メンバー

構成メンバーは、総裁(1名)、副総裁(1名)、理事(1名)となっており、スイス連邦議会 によって任命されます。

為替政策におけるスイス中銀の位置づけ

スイス中銀は2009年から2010年に掛けて、大規模なスイスフラン売りを実施しました。そして2011年9月6日から、スイスフランの対ユーロレート(EUR/CHF)の下限を1.20に設定し、その下限では無制限に為替介入を実施しました。

その結果としては、すでに上に張ったリンク先の記事のように失敗に終わってしまうわけですが、スイス中銀は為替介入志向が強い中央銀行と言えるでしょう。

なお、歴史を紐解くとスイス中銀は、1978年にもスイスフランの上限を設定しており、当時のヨーロッパの基準通貨であるドイツ・マルクを対象に介入を行っていました。

この辺りも日本と似ています。

日本にとってのアメリカ、スイスにとってのユーロ圏は大きすぎる貿易相手であり、その相手との為替レートは決定的に重要なわけですね。

スイスフランを取引するなら、スイス国内の経済指標は当然重要ですが、ユーロ圏の経済動向やECB総裁発言なども重要になってきます。

 

またスイス中銀は自前で外貨準備を保有しており、介入もスイス中銀の判断で実施される。財務省が判断する日本などとは違い、中銀が独自に判断するスタイルで権限の強さが伺えます

 

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