円高と円安のメリット・デメリットを整理してみた
円高・円安のメリット・デメリット
円高・円安とはってタイトルにしているので、円高・円安のどちらがいいかってよく論争になっている観点からもまとめておきます。
これってもう立場によって違うとしか言いようがないですよね。
円高で苦しい人は生産者
よく報じられる、「円高」で苦しいって意見があると思います。
円高になると国内の生産コストが上昇するので、企業の競争力が失われるっていうのがメインの理由です。
先ほどの円ベースの表記をします。
日本企業は、日本国内で給料を払ったり、資材を調達したりする割合が(一般的には)高いです。これまで100円で作れていた(100円が生産コストだった)商品は、100円1ドルが100円1.25ドルに円高になれば、ドルでは1ドルから1.25ドルに生産コストが上昇することになります。
これでは、海外との競争に不利ですね。
最近では、日本企業も海外の生産が増えているので、円安だからって輸出が増えるとは限らないって議論もよく出ます。しかし、輸出量って量ベースでの増加が限定的だったとしても、コストの減少っていう利益ベースでの貢献が間違いなくあるわけです。
2013年以降の円安局面で株価が2倍以上に上昇したのも記憶に新しいところですが、この上昇のうち大きな部分が、円安による企業収益の上昇を期待したことによるものです。
円安で苦しいのは(お金持ちの)消費者
上の意見への反論として、「円高」は円建てで計上されている日本の資産の価値が上昇するので、国富の増加だ。望ましいのだって意見もあります。
たしかに、(円建てで)預金をたくさん持っている人は、円の価値が高い円高の方が望ましいのです。
為替レートは為替の交換比率って言いましたが、それはそのまま国と国と購買力(商品を買う力)の差に直結します。
だから、円高の方が自分の日本の購買力が高まって、海外から安い値段でものが買えます。また、海外旅行なんかしても、円の価値が高い方が、現地通貨に換える際の交換レートが有利なので、お得ですね。
先ほど企業は円安が望ましいといいましたが、もちろん例外はあります。内需企業って言われるような、海外からものを仕入れて、日本国内で販売するような企業は円高の方が有利になります。円の購買力が上がるので、海外から安くものが調達できるって理屈は先ほどと一緒ですね。
ただ、こうした企業は日本企業では多数派ではないので、一般論としては、円安→企業が有利って表現を使っています。
結局トータルではどっちがいいの?
円高・円安のメリット・デメリットを考えると、立場によってまるで正反対の意見になります。じゃあトータルではどっちがいいのかってことについて個人的な意見を書いてみます。
わたしはやっぱり円安派ですね~
というのは、円高のメリットを純粋に享受できる消費者って、生産活動に関与していなくてかつお金を持っているって条件(もしくは外貨建てで多額の負債を持っている)を満たす人でしょう。こういった人は多勢を占めておらず、引退したお金持ちの人くらいだと思うからです。
大半の消費者は、円安で物価が上がったとしても、その人の関与している生産活動が円安によって支援される恩恵の方が大きくなるはずです。
だからこそ、金融危機以降は世界的に通貨安競争が起きているわけですし。
また、「資源国の呪い」って考え方があります。
天然資源が豊富な国は、直観的には経済成長に有利ですが、実証的には資源がない国より成長速度が落ちやすいことがよく知られています。
その原因は、資源の輸出が盛んになることで通貨が高くなり、製造業などの他の産業が衰退することが要因と言われています。普通なら有利になるはずの埋蔵資源が不利に働くケースが多くなるほど、通貨高って罪深いんですよね~
まあ、ここで書いた意見も日本が国(企業や家計も含む)の負債を、自国内で調達できるっていう現在の環境が続いているうちの話ですが。
海外での負債調達に依存するようになってしまったら、ギリシャみたいに通貨安が負債の実質価値の上昇を通じて財政危機って展開になるわけなので・・・
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